育成就労の給料に、国が決めた金額はありません。法律の条件は「日本人が同じ仕事をする場合の報酬と同等以上」であることです。働ける期間は原則3年で、試験に合格できなかったときなどは最大1年延長できる場合があります。3年の後は、技能と日本語の試験に合格すれば、特定技能1号に移って働き続ける道があります。
育成就労制度は、2027年4月1日に始まります。この記事では、給料のルール、給料から引かれるもの、昇給、来日前に払う費用、働ける期間、3年の後の道を順に説明します。内容は、出入国在留管理庁(入管庁)の「育成就労制度運用要領」と「育成就労制度Q&A」を、2026年10月19日に確認したものです。
育成就労制度の全体(目的・分野・転籍・日本語の要件など)は、次の記事で説明しています。
→ 育成就労制度とは?技能実習との違い・転籍・日本語要件を全体解説【2027年4月開始】
育成就労の給料のルール:日本人と同等以上
育成就労の給料(法律では「報酬」)は、日本人が同じ仕事をする場合の額と同等以上でなければなりません。これは、会社が育成就労計画の認定を受けるための条件の一つです。「外国人だから」という理由で、給料を不当に低くすることは認められていません。
会社はどうやって「同等以上」を示すのか
会社は計画の認定を申請するとき、雇用契約書・雇用条件書などで、給料が日本人と同等以上であることを示します。運用要領では、次のように確かめることになっています。
- 同じ仕事をする日本人がいる場合:仕事の内容と責任の重さが同じであることを説明し、その日本人と同等以上であることを示す
- 同じ仕事をする日本人がいない場合:賃金規程があれば規程に照らして示す。規程がなければ、仕事の内容が最も近い日本人と比べて、どう違うかを示す
最低賃金などの労働のルールも日本人と同じ
育成就労で働く人は「労働者」です。労働基準法や最低賃金法など、労働に関する法律は日本人と同じように適用されます。最低賃金は都道府県ごとに決まっています。働く場所の最低賃金は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確かめられます。
外国人であることを理由にした差別は禁止
育成就労で働く人であることを理由に、待遇で差をつけることは禁止されています。対象は、給料の決め方、教育や訓練、社員寮・診療施設などの福利厚生です。運用要領は、育成就労の人であることだけを理由にボーナスを払わないことを、差別の例に挙げています。
待遇は母国語で説明を受ける
会社や監理支援機関は、待遇の中身を、本人の母国語で直接、詳しく説明することになっています。そのとき、母国語が併記された「育成就労の期間中の待遇に関する重要事項説明書」を作ります。雇用契約書・雇用条件書も母国語の併記が求められます。説明を受けた書類は、来日後も手元に残しておくと安心です。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章(冒頭の労働関係法令)・第2節 第3(雇用契約の内容の直接説明)・第10(育成就労外国人の待遇)、出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領のポイント」、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)
「報酬」に入るもの・入らないもの
「日本人と同等以上」と比べる「報酬」には、入るものと入らないものがあります。運用要領の説明をまとめると、次のとおりです。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 報酬に入る | 基本給、賞与(ボーナス)、出勤の状況や仕事の内容に応じて払われる手当(精皆勤手当、職務手当、危険作業手当など) |
| 報酬に入らない | 通勤手当・住宅手当など、かかった費用を払い戻す性格のもの(税金がかかるものは除く) |
つまり、通勤手当を多く払っているからといって、基本給を日本人より低くしてよいことにはなりません。比べるのは、基本給・賞与・出勤の状況や仕事の内容に応じた手当です。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章第2節 第10(1)用語の解説「報酬」)
給料から引かれるもの:税金・社会保険料・食費・家賃
雇用条件書に書かれた給料(総支給額)が、そのまま手に入るわけではありません。税金や社会保険料が引かれ、社員寮の家賃や食費を払うこともあります。会社は来日前の説明で、引かれるものの金額と内容、特に手取りの額を、雇用条件書の該当する所を示しながら説明することになっています。
食費・家賃・水道光熱費は「合意した実費相当」だけ
食費・居住費(家賃)・水道光熱費など、毎月決まって払う費用には、次のルールがあります。
- 何に対して払うのか(食事・部屋の中身)を本人がよく理解し、会社と合意していること
- 金額が、実際にかかった費用に相当する額など、適正な額であること
運用要領では、たとえば次のような上限の考え方が示されています。
- 会社が借りた部屋(借上げ物件):家賃・管理費などを、そこに入居する育成就労の人の人数で割った額以内
- 水道光熱費:実際にかかった額を、一緒に住む人の合計人数で割った額以内
- 社員食堂:育成就労の人以外の社員から受け取る額以内
光熱費の値上がりなどで負担額を変えるときは、前もって本人に説明し、理解を得る必要があります。水道光熱費の負担額について相談があれば、会社は請求書など実際の費用が分かるものを示して説明することになっています。
税金:育成就労の給料には所得税と住民税がかかる
技能実習生の中には、国と国との約束(租税条約)によって、給料に税金がかからない人がいました。育成就労では、原則として租税条約の免税の対象にはならず、所得税がかかります。住民税も同じように対象です。手取りを考えるときは、税金が引かれる前提で計算してください。
給料の受け取り方
給料は、本人の口座への振込みなど、実際に払われた額を確かめられる方法で払われます。本人が希望すれば、資金移動業者の口座への支払い(いわゆるデジタル払い)もできます。ただし、職場で労使の協定が必要などの条件があります。口座振込みの場合、帰国後は現地で引き出せないことがあります。帰国直前の給料の受け取り方は、前もって会社と確かめておくことになっています。
この理由で給料を下げることはできない
技能検定などの受験料や、会社が監理支援機関に払う費用(監理支援費)を理由に、給料を低くすることは認められていません。また、残業(時間外労働)をさせたときは、割増の賃金を払わなければなりません。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章第2節(雇用契約の内容の直接説明、第10(5)定期に負担する費用、(6)報酬の口座振込み等、(1)報酬の額)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q80、国税庁「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について(照会)」)
給料は上がる?2年目・3年目の昇給
続けて働く人の給料は、2年目・3年目に前の年より上げるなど、技能の身につき方に応じて格付けすることが必要とされています。働く人が技能を身につける意欲を高めるためです。ただし、何円上がるかは決められていません。昇給の仕組みは、雇用条件書や会社の賃金規程で確かめてください。
転籍の制限が2年の分野では、待遇の向上が必要
育成就労では、本人の希望で別の会社に移る(転籍する)ことが、条件つきで認められています。条件の一つが、今の会社で一定の期間(転籍の制限期間)を超えて働いていることです。ほかにも、技能と日本語の水準、転籍先が優良な会社であること、同じ業務区分の中であることなどの条件があります。制限期間は分野ごとに1年か2年です。2年の分野でも、会社は自分の判断で1年にできます。
会社が1年を超える制限期間(2年)を選ぶ場合は、分野ごとに決められた待遇の向上策をとる必要があります。たとえば工業製品製造業分野では、協議会が毎年、昇給率を決めて公表します。制限期間を2年にした会社は、1年目から2年目にかけて、その昇給率で所定内の給与を上げることになっています。
| 転籍の制限期間 | 分野 |
|---|---|
| 2年 | 介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、外食業、工業製品製造業、飲食料品製造業、資源循環 |
| 1年 | ビルクリーニング、宿泊、農業、漁業、林業、木材産業、鉄道、リネンサプライ、物流倉庫 |
転籍の条件と手続は、別の記事で詳しく説明する予定です。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章第2節 第10(1)留意事項・(8)1年を超える転籍制限期間の待遇向上、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q47・Q50、出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領のポイント」、出入国在留管理庁「特定の分野に係る育成就労制度運用要領(工業製品製造業分野)」、出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」)
来日前に払う費用:送出機関への支払いは月給の2か月分まで
母国の送出機関に払う費用には、上限があります。上限は、育成就労計画に書かれた月給(所定内賃金)の2か月分です。上限を超える分は本人に負担させることはできず、受入れの会社か監理支援機関が負担します。
- 所定内賃金とは:基本給に、決まって払われる手当(通勤手当・精皆勤手当など)を足した月額です。残業代・休日出勤手当・深夜手当は入りません。
- 対象になる費用:名目に関係なく、送出しの過程で送出機関に払った費用すべてです。送出機関と連携した学校の授業料や、仲介人に払った費用も対象です。
- 領収書を残す:会社や監理支援機関は、送出機関が出した領収書などで、上限を超えていないか確かめます。払ったときの領収書は必ずもらって、保管してください。
上限は「ここまで取ってよい」という意味ではありません。運用要領は、本人が払う費用はできるだけ少なくすることが望ましいとしています。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章第2節 第14(送出機関に支払った費用の額)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q73、出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領のポイント」)
育成就労で働ける期間は原則3年
育成就労の期間は3年以内で、原則として3年です。3年より短い計画は、適正な育成ができないとして認定されない可能性があります。技能実習のような1号・2号・3号の区分はなく、最初から3年間の計画を作って認定を受けます。

出典:編集部作成(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html)、「育成就労制度運用要領」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001467946.pdf)、「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf)をもとに作成)
図の上の段が、期間の流れです。下の段は、延長できる場合と、3年の数え方を示しています。
試験に合格できなかったときは最大1年の延長
育成就労の目標は、特定技能1号に必要な技能と日本語の試験に合格することです。計画どおり適正に育成就労をしていたのに目標の試験に合格できなかった場合は、計画の変更の認定を受けて、最大1年まで延長できる場合があります。病気やけが、天災などで試験を受けられなかった場合も同じです。延長の期間は、もう一度受験して合否を確かめるのに必要な期間を考えて申請します。延長が認められるかは、計画の変更の審査で判断されます。
一時帰国した期間の数え方
- 自分の都合の一時帰国:夏休みや年末年始に、再入国許可(みなし再入国を含む)で一時的に帰国した期間は、3年に含まれます。
- 妊娠・出産などで中断した期間:会社などが中断の届出(育成就労実施困難時届出書)を出して帰国した期間は、含まれません。再開するときは計画の変更の手続が必要です。
- 農業・漁業の季節的な一時帰国:農業と漁業では、仕事の少ない時期に毎年同じ時期に帰国する計画を作れます。1回の帰国は最大6か月で、その期間は3年に含めません。日本で働く期間が合計で3年になる計画を作ります。帰国の旅費は、受入れの会社か監理支援機関が負担します。
在留カードの期限にも注意
計画で認められた期間と、在留カードの在留期間は、同じとは限りません。計画の期間の途中でも、在留期間が切れる前に、地方出入国在留管理局で在留期間の更新を申請する必要があります。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章第2節(育成就労の期間・季節的な一時帰国)、第4章第5節(育成就労期間の延長)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q10・Q17・Q27・Q57・Q62)
3年の後も日本で働ける?特定技能1号・2号へ
育成就労は、特定技能1号の水準の人を育てる制度です。3年の間に技能と日本語の試験に合格すると、在留資格を特定技能1号に変えて、日本で働き続ける道があります。
特定技能1号に移るための試験
| 種類 | 必要な試験 |
|---|---|
| 技能 | 技能検定3級など、または特定技能1号評価試験 |
| 日本語 | 日本語能力A2.2相当以上の試験(JFT-BasicのA2.2相当、日本語能力試験〈JLPT〉のN4など) |
分野によっては、A2.2相当より高い日本語の水準が求められる場合があります。今の特定技能では、技能実習2号を良好に修了した人は、仕事の内容が実習の職種・作業と関連していれば、試験が免除されます。育成就労から移る場合は、この免除はなく、両方の試験に合格することが必要です。
→ 技能実習から特定技能「介護」に移行するときに免除になる試験の種類と要件
在留できる期間と家族
| 在留資格 | 在留できる期間 | 家族の帯同 |
|---|---|---|
| 育成就労 | 原則3年(不合格のときなど、最大1年の延長ができる場合がある) | 原則として認められない |
| 特定技能1号 | 原則5年が上限 | 原則として認められない |
| 特定技能2号 | 上限なし | 認められる(家族滞在) |
特定技能2号の対象は、特定技能の19分野のうち11分野です。1号を経れば自動的に2号に移れるわけではなく、2号の水準があるかは試験の合格などで判断されます。
途中で特定技能1号に移ることもできる?
3年を待たずに特定技能1号に移ることは、条件つきで認める方針です。条件は、試験に合格していることに加えて、今の受入れの会社で働いた期間が一定の期間を超えていることです。その期間の長さは、この記事の執筆時点で入管庁から示されていません。
技能実習生だった人は
過去に技能実習をした期間は、育成就労をした期間とみなされます。2年以上技能実習をした人が、もう一度来日して、技能実習と違う分野で育成就労をすることは、基本的にできません。施行のときに技能実習中の人の扱いは、次の記事で説明しています。
→ 育成就労の経過措置|技能実習生は2027年4月以降どうなる?3号・新規入国・人数枠
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q9・Q12・Q58・Q74・Q75・Q76・Q79、出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」(家族の帯同・受入れ分野・特定技能2号))
よくある質問
Q. 育成就労の給料の相場はいくらですか? A. 国が公表している相場や平均額はありません。ルールは、日本人が同じ仕事をする場合と同等以上で、働く都道府県の最低賃金を下回らないことです。具体的な額は、雇用条件書で確かめてください。
Q. 給料が雇用条件書と違っていたら、どうすればいいですか? A. まず会社と監理支援機関に伝えてください。解決しないときは、外国人育成就労機構の母国語の相談窓口に相談でき、法律に違反する事実があれば申告もできます。労働基準法などの違反は、労働基準監督署にも申告できます。申告したことを理由に、会社が不利益な扱いをすることは禁止されています。労働条件については、厚生労働省の「外国人労働者向け相談ダイヤル」でも、外国語で電話相談ができます(言語ごとに曜日が決まっていて、通話料がかかります)。
Q. 残業は何時間までですか? A. 原則として月45時間・年360時間までです。特別な事情がある場合でも、年720時間、1か月100時間未満(休日労働を含む)、複数の月の平均80時間(休日労働を含む)が上限です。残業代は割増で払われます。
Q. 3年たって試験に落ちたら、すぐに帰国しなければいけませんか? A. 適正に育成就労をしていたのに不合格だった場合は、最大1年まで延長して、もう一度受験できる場合があります。延長が認められるかは、個別の審査で決まります。会社と監理支援機関に早めに相談してください。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章第2節 第10(1)留意事項、第6章(申告)、第7章第1節(相談)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q10・Q74、厚生労働省「外国人労働者向け相談ダイヤル」)
まとめ
- 育成就労の給料に決まった金額はありません。日本人が同じ仕事をする場合と同等以上が条件で、最低賃金などの労働のルールも日本人と同じです。
- 比べる「報酬」は、基本給・賞与・出勤の状況や仕事の内容に応じた手当です。通勤手当・住宅手当など、かかった費用を払い戻す性格のものは、一般に入りません。
- 給料からは、税金・社会保険料と、合意した食費・家賃など(実費相当などの適正な額)が引かれます。育成就労の給料は、原則として租税条約の免税になりません。
- 2年目・3年目は、技能に応じて給料を上げる仕組みが必要とされています。
- 送出機関に払う費用は、月給の2か月分までです。超える分は受入れ側が負担します。
- 働ける期間は原則3年です。試験に不合格のときなどは、最大1年延長できる場合があります。
- 技能と日本語の試験に合格すれば、特定技能1号(原則5年まで)、さらに対象の分野では特定技能2号(上限なし)に進む道があります。
給料や期間の具体的な条件は、会社や仕事の内容によって変わります。雇用条件書をよく読み、分からない点は会社と監理支援機関に確かめてください。個別の事情で判断に迷うときは、専門家に相談してください。
→ 育成就労制度とは?技能実習との違い・転籍・日本語要件を全体解説【2027年4月開始】

