監修者:申請取次行政書士 安藤祐樹
近年、特定技能の在留資格を取得して介護分野で就労する外国人材が増加しています。中でも、技能実習を修了した後、試験免除の制度を活用して特定技能へ移行するケースが多く見られます。
本記事では、介護分野における技能実習から特定技能への移行に関して、試験免除の条件や対象となる試験の種類について、公式情報に基づきわかりやすく解説します。
特定技能「介護」の在留資格取得に必要な試験の種類

特定技能「介護」の在留資格を取得するには、原則として所定の3つの試験に合格する必要があります。まずは、それぞれの試験の種類や特徴について確認しておきましょう。
介護技能評価試験
介護技能評価試験は、外国人が特定技能「介護」の在留資格を得て日本の介護現場で働くために必要な専門的知識や実務能力を確認するための試験です。
主催者は厚生労働省であり、2025年7月時点において、受験者は以下13言語の中から選択して受験できます。
・日本語
・英語
・ビルマ語
・中国語
・ウルドゥー語
・ベンガル語
・インドネシア語
・クメール語
・モンゴル語
・ネパール語
・タイ語
・ウズベク語
・ベトナム語
受験資格としては、試験日に17歳以上(インドネシア国籍の場合は18歳以上)であること、日本国籍でないこと、日本国内で受験する場合は何らかの在留資格を持つ方が対象となりますが、短期滞在の資格でも受験が可能です。
試験方式はコンピュータを利用したCBT方式で、全国および海外の主要都市で定期的に実施されています。
この試験は合計45問で構成され、制限時間は60分となっています。
試験内容は「介護の基本」や「こころとからだのしくみ」、「コミュニケーション技術」「生活支援技術」といった学科問題(40問)に加え、判断や実技を問う問題(5問)が含まれています。
合格基準は総得点の60%以上と定められており、試験終了後にはその場で合否が表示され、5営業日以内にウェブサイトでスコアレポートを確認できます。
なお、不合格となった場合は翌日から45日間は再受験ができません。
受験料はおよそ1,000円程度で、事前にID登録や顔写真の提出が必要です。試験日程は開催国、都市などにより異なりますが、主要都市においては高頻度で開催されているため、受験者の都合に合わせて試験を受けることができます。
介護日本語評価試験
介護日本語評価試験は、特定技能「介護」の在留資格を取得し日本の介護現場で働く外国人に対し、必要な日本語能力が備わっているかを判定する目的で実施されています。
受験は厚生労働省の主催で、試験当日に17歳以上(インドネシア国籍の場合は18歳以上)であれば、在留資格の種類を問わず幅広く受験可能ですが、日本国籍の方は対象外となります。
試験はCBT方式で行われ、全国および海外の主要都市で定期的に実施されており、日本国内で受験する場合は短期滞在の在留資格でも受験することができます。
この試験は全15問で構成されており、制限時間は30分と設定されています。
問題は「介護のことば」「会話や声かけ」「文書」など、実際の介護現場で直面する日本語の運用力を測る内容が中心です。合格基準は総得点の73%以上となっており、終了後にはその場で結果が表示され、数日以内にウェブ上でもスコアが確認できます。
一方、不合格の場合は試験日の翌日から45日間は再受験ができないため、入念に準備してから受験することをおすすめします。
厚生労働省は公式ウェブサイトで学習教材を公開しており、受験者はこの資料を活用しながら準備を進めることが推奨されています。受験料は1,000円程度で、申し込みにはプロメトリックIDの取得や写真登録が必要です。
日本語能力試験(JLPT)N4相当
日本語能力試験(JLPT)N4は、日常生活で必要な基本的な日本語が理解できるレベルかどうかを測定するための試験です。
特定技能の在留資格申請において、日本語能力の証明として広く活用されており、介護分野での就労にも求められる水準とされています。
N4は、ゆっくり話される日常的な会話を理解でき、飲食店や宿泊施設、介護現場などで最低限のやり取りが可能なレベルです。試験は年2回(7月・12月)実施され、海外からの受験も可能です。
なお、N4の合格証がなくても、日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格すれば同等の日本語能力水準を有しているとみなされます。JFT-Basicは年6回実施されており、日程の柔軟性が高い点も大きなメリットです。
技能実習から特定技能「介護」移行時に試験免除となる条件

技能実習から特定技能「介護」へ試験免除で移行する場合、必ず技能実習2号を良好に修了していることが前提となります。したがって、技能実習1号修了者が特定技能へ直接移ることは認められていません。
ここでは、どのような条件で試験が免除されるのかを詳しく解説します。
介護職種・作業の技能実習2号を良好に修了した場合
介護職種・作業の技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能「介護」への移行時に必要なすべての試験が免除されます。
具体的には、介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力試験(JLPT)N4相当以上の3種類の試験が免除対象です。この「良好な修了」とは、技能実習1号の1年修了、技能実習2号を1年10か月以上修了、技能検定3級または同等の実技試験合格、さらに評価調書等で出勤や技能習得状況が良好であることが確認できることを指します。これらの条件をすべて満たすことが移行の要件となります。
その他の職種・作業の技能実習2号を良好に修了した場合
介護以外の職種や作業で技能実習2号を良好に修了した場合、日本語能力試験(JLPT)N4相当以上については免除されますが、介護技能評価試験および介護日本語評価試験の免除は認められていません。
他分野の技能実習から介護分野の特定技能へ移行するケースは多くありませんが、移行を希望する場合は、試験日程の確認や学習時間の確保など、早めの準備と対策が重要です。
技能実習3号から特定技能に移行する場合の注意点
技能実習3号から特定技能「介護」へ移行する場合は、原則として実習計画をすべて修了した後に在留資格の変更手続きを行う必要があります。
そのため、技能実習2号を良好に修了していても、3号実習の途中である限り、特定技能への直接の移行は認められません。移行の適切な時期や必要な手続き期間を事前に確認し、円滑な資格変更に備えることが大切です。
その他の在留資格から移行する場合の試験免除条件
技能実習以外の在留資格から特定技能「介護」へ移行する場合でも、一定の条件を満たせば3つの必須試験が免除されます。
たとえば、介護福祉士養成施設を修了した外国人は、試験を受けることなく特定技能「介護」の在留資格を取得できます。これは、養成施設が介護分野の専門職育成の中核的な役割を果たしており、その課程を修了することで特定技能「介護」で就労する上で必要な知識と技能を備えていると判断されるためです。
さらに、EPA介護福祉士候補者として3年10か月以上にわたり適切に就労・研修し、直近の国家試験で全科目5割以上の得点を得た場合も、すべての試験が免除されます。これは、EPA制度に基づく計画的な研修を経て技能と知識が一定の水準に達していると評価されるためです。
それぞれ移行ルートに適用される要件を正しく理解し、確実に手続きを進めることが円滑な在留資格変更の鍵となります。
まとめ
この記事では、技能実習から特定技能「介護」に移行する際に必要な試験や、その免除条件について詳しく解説しました。
もし制度の詳細や自身の状況に不安がある場合は、早めに専門機関等へ相談し、必要な準備を着実に進めることをおすすめします。外国人材のキャリアや在留資格の選択肢を広げるためにも、最新情報を確認しながら計画的にステップを踏むことが重要です。
監修者コメント
技能実習2号を良好に修了した外国人が特定技能1号へ移行する際の試験免除制度は、長期的な雇用継続を望む外国人本人と受け入れ企業の双方にとって有効な選択肢です。
ただし、技能実習2号と特定技能1号は同じ「介護分野」であっても制度の目的や法律上の許可の範囲が異なるため、移行後に業務内容の見直しが必要となるケースもあります。制度に関して不明点がある場合は、専門家へ相談するなどして、移行後も安心して働ける環境を整えることが大切です。