【週28時間】留学生をアルバイトで雇用する際の時間制限・届出など法律上のルールを解説

留学生のアルバイト雇用のルールと手続き
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執筆者:申請取次行政書士 安藤祐樹

近頃、街中のコンビニや飲食店などでアルバイトをする留学生を目にする機会が増えてきました。留学生のアルバイトは、他のフルタイムで就労するための在留資格と異なり労働時間の制限がありますが、従事可能な業務の幅が広く、雇用主が在留資格の申請に関わる必要がないことから、雇用の難易度は比較的低いと言えます。

そこで、この記事では、留学生をアルバイトとして雇用する際の入管法上のルールや手続きについて、初めての留学生雇用の場合でも流れが把握できるよう、詳しく解説します。

目次

在留資格「留学」とは

在留資格「留学」とはの画像

在留資格「留学」は、日本国内の大学、専門学校、日本語学校などで教育を受ける活動を行う外国人が取得する在留資格です。この在留資格を保有する外国人は、原則として就労活動を行うことはできませんが、出入国在留管理庁に対して「資格外活動許可」の申請をして、許可された場合はアルバイトをすることができます。在留資格について詳しい解説が必要な方は、以下の記事をご確認ください。

なお、短期留学や教育機関以外で日本文化を学ぶ活動も広義の留学に該当しますが、これらの活動を目的とする外国人が取得する在留資格は「短期滞在」または「文化活動」となり、入管法上の「留学」とは異なります。この記事では、「留学生」という言葉を在留資格「留学」で日本に滞在する外国人の意味で使用します。

留学生のアルバイトは資格外活動許可が必要

留学生のアルバイトは資格外活動許可が必要

資格外活動許可とは、外国人が保有している在留資格の活動範囲外の就労活動を行うための許可のことです。在留資格「留学」の活動範囲は「教育を受ける活動」ですが、資格外活動許可を取得すれば、許可の範囲内でアルバイトや収入を伴う事業の運営が可能となります。留学生が資格外活動許可を取得するための主な要件は以下の通りです。

資格外活動許可(留学生)の原則的要件

  • 教育を受ける活動の遂行が妨げられないこと
  • 現に教育を受ける活動を行っていること
  • 法令(刑事・民事問わず)に違反しない活動であること
  • 活動内容が風俗営業等でないこと
  • 収容令書の発布または意見聴取通知書の送達もしくは通知を受けていないこと
  • 素行が不良ではないこと

①は学業に支障のない範囲で許可を認める趣旨のものです。例えば、フルタイムで就労することは、日本で行う主な活動が「教育を受ける活動」と言えなくなってしまうため、認められません。

②の「現に教育を受ける活動を行っていること」とは、申請人が学校に通っていない場合や退学した場合などは、在留資格「留学」の在留期間が残っていても資格外活動を認めないという趣旨の規定です。卒業後のアルバイトの可否については、学則などの規定により卒業後も一定期間学籍を有している場合に限り、引き続きアルバイトを継続することができます。

④の風俗営業等とは、接待を伴うキャバレーやスナック、店内の照明が10ルクス以下の喫茶店やバー、麻雀店、パチンコ屋、酒類提供を伴うナイトクラブ、インターネット上のアダルト配信、異性紹介営業、性風俗特殊営業などを指し、これらの業種では、直接の接待等を行わない従業員であっても資格外活動許可は認められません。

包括許可

包括許可とは、留学中の学費や生活費を補う目的でアルバイト活動を行うための許可の枠組みで、留学生が受ける資格外活動許可は基本的にこの包括許可です。この許可を受けた留学生は、1週間に28時間以内(教育機関の長期休業期間は1日8時間以内)に限り就労活動が認められます。包括許可の期限は一律で「留学」の在留期間満了までです。

なお、包括許可では、時間単位での計測が困難な契約に基づいて就労することはできません。例えば、成果報酬や請負などで客観的に労働時間を証明できない場合は、個別許可を取得する必要があります。

個別許可

個別許可とは、包括許可の範囲外の活動に対して個別に審査を行い、許可範囲を決定する制度です。留学生がこの許可を取得するためには、資格外活動許可の原則的要件に適合することに加えて、申請内容が以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 大学(短期大学を除く)に在籍している留学生が、年度末に修業年限を終える予定で、かつ卒業に必要な単位をほぼ修得しており、就職活動の一環として職場体験を目的とする場合
  • 大学院に在籍している留学生が、年度末に修業年限を終える予定で、就職活動の一環として職場体験を目的とする場合
  • 申請する活動の内容が語学教師、通訳、翻訳、家庭教師、その他申請人(留学生)の専攻科目と密接な関係のある職種または社会通念上学生が通常行っているアルバイトの範囲内の職種である場合
  • 日本国内での起業を目的とした準備活動である場合

アルバイトの28時間制限の考え方

就労時間制限の考え方の画像

資格外活動の包括許可を受けた留学生は、1週間で28時間以内に限りアルバイトに従事することができますが、この28時間の計測は「どの曜日から1週の起算をしても常に1週28時間以内」でなければなりません。

例えば、以下の画像のようなシフトでアルバイトをすると、月曜日を起算点とした場合、1週目の労働時間は27時間で、2週目の労働時間は8時間となり、資格外活動許可の時間制限の枠内に収まります。しかし、1週の起算点を金曜日として計算すると労働時間の合計は29時間となり、就労可能な時間制限を超えてしまいます。1週の労働時間が、月をまたいで28時間を超えることも認められないため、留学生のアルバイトを雇用する際は、細心の注意を払ってシフトを作成する必要があります。

留学生のアルバイトの28時間制限を超えるオーバーワークの説明画像

長期休業中は週40時間まで

長期休業期間とは、夏季休業、冬季休業、春季休業として教育機関の学則に定められている期間のことです。長期休業期間中は、1日8時間までの就労が認められますが、労働基準法の規定に反して週40時間を超えて働かせることはできません。

日本国内に在留する留学生の特徴

日本国内に在留する留学生の特徴の画像

一言で留学生と言っても、それぞれの日本語能力や就労経験、専門知識などはさまざまです。「留学」の在留資格で日本に滞在する外国人のうち、在留数が多いのは「日本語学校」「専門学校」「大学」に通う留学生です。それぞれの特徴を解説します。

日本語学校の留学生

「留学」の在留資格を保有し、日本語学校に在籍する学生は、日本に入国する時点で「基本的な日本語をある程度理解することができる」とされる日本語能力試験N5相当の学生が多いです。日本語学校の在籍期間は原則として最長2年で、卒業時にはN2またはN3程度の日本語能力を持っている学生が多いです。

日本語学校に通う学生の多くは、入国後2~3カ月後にアルバイトを開始することが多いため、日本語があまり必要のない職場で人手不足の解消のために留学生のアルバイトを採用したい企業は、この段階の学生を雇用するのがおすすめです。ただし、日本語学校に通う学生にとってアルバイト先は重要な日本語学習の場でもあります。日本語能力の向上のために、日本語のコミュニケーションの機会が多い職場でアルバイトをしたいと考える学生も多くいます。

専門学校の留学生

専門学校の留学生は、日本語学校を卒業している学生が多いため、日本滞在歴も比較的長く、日本語能力が高い傾向があります。また、専門学校では実践的な職業教育が行われているため、特定の分野の専門知識や技術を持っている学生が多いことも特徴です。例えば、福祉系の専門学校に在籍する留学生が介護施設でアルバイトをしたり、観光系の専門学校に在籍する留学生がホテルや旅行会社などでアルバイトをする場合、高い専門知識や語学能力を活用することが可能です。

大学の留学生

大学に在籍する留学生は、入学時点で原則として日本語能力試験N2相当以上の日本語能力を有しています。また、大学入学前に1年半または2年程度、日本語学校に通いながらアルバイトをしていた経験を持つ学生も多いです。大学を卒業して就職する留学生は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更する際に、専攻科目と業務の内容の関連性を柔軟に審査してもらいやすいです。そのため、大学在学中から通訳者、翻訳者、語学講師、ITエンジニアなど「技術・人文知識・国際業務」に該当する職種でアルバイトをする学生も多いです。

留学生を雇用するメリット

留学生を雇用するメリットの画像

留学生のアルバイトは、従事できる業務の制限が少ないため、就労時間の制限に気を付ければ、非常に柔軟に業務を割り当てることが可能です。以下に、留学生をアルバイトとして雇用する主なメリットを解説します。

メリット1.入管法に規定がない分野の仕事ができる

留学生のアルバイトは、風俗営業等を除き、他の法律に反しない限り、どのような業務にも従事することができます。そのため、入管法に規定されている就労系在留資格に含まれない分野の仕事も可能です。コンビニの仕事は、留学生のアルバイト先として定着していますが、この業務は入管法に規定がない分野の仕事の代表的な例です。その他、小売業などで接客業務に従事しながら、外国人の買い物客が訪れた際に多言語対応スタッフとして活躍してもらうことも可能です。

メリット2.複数の分野に跨って働くことができる

入管法に規定されている就労系在留資格は、原則として特定の分野の仕事のみに限定して就労を許可する仕組みになっています。しかし、留学生の資格外活動の包括許可は、複数の分野に跨って仕事をすることが可能です。例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人がホテルのフロントスタッフとして雇用されている場合、ベッドメイキングや清掃業務などは行うことができませんが、留学生のアルバイトの場合は、フロント業務に従事しながら空いている時間に清掃業務などを行うことが可能です。

メリット3.卒業後にそのまま継続雇用できる可能性がある

日本に留学する外国人の多くは、大学や専門学校を卒業後、日本国内で就職することを希望しています。留学生と企業の双方が卒業後の継続雇用を望む場合は、留学生の専攻科目と業務の内容が入管法に規定されているいずれかの在留資格の許可基準に適合していれば、卒業後に在留資格を変更してそのまま社員として就職してもらうことが可能です。また、最近は日本語学校も特定技能1号の在留資格で就職するための教育課程を設置している学校が増えてきており、日本語学校に通う留学生をアルバイトとして雇用し、卒業後に在留資格を特定技能1号に変更して継続雇用する方法も存在します。

メリット4.留学生は日本語能力が高い傾向がある

資格外活動許可を取得してアルバイトをしている留学生で、在留数が多いのは、主に「大学(院)」「専門学校」「日本語学校」に通う学生です。そのうち、日本に入国して間もない日本語学校の学生を除き、留学生の日本語能力は、他の在留資格で日本に滞在する外国人と比較して高い傾向があります。留学生は、日本語の会話能力だけでなく、読み書きの能力もバランスよく兼ね備えている点が大きな特徴です。

留学生アルバイトの採用前後にやるべきこと

留学生アルバイトの採用前後にやるべきこと

外国人留学生をアルバイトとして採用するためには、日本人の雇用とは異なるいくつかのルールを理解する必要があります。これらのルールをしっかり守って採用活動を行わないと、入管法違反や労働法違反などに問われる可能性があるため、注意が必要です。

在留カードと学生証を必ず確認

留学生がアルバイトをするためには、資格外活動許可が必要です。面接時には必ず在留カードを確認してください。面接に訪れた留学生が資格外活動の包括許可を受けている場合、在留カードの裏面の資格外活動許可欄に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載されています。その他、面接時に確認すべき主な内容は以下の通りです。

  • 在留カードは本物か
  • 在留カードの顔写真は応募者と同一人物か(表面)
  • 在留資格は「留学」か(表面)
  • 在留期間の満了日は過ぎていないか(表面)
  • 資格外活動許可を受けているか(裏面)
  • どこの学校に在籍しているのか(学生証)
  • 学校の在籍期間はいつまでか(学生証)
  • その他在留カードと学生証の記載内容に矛盾がないか
在留カードの表面
在留カードの裏面

画像の引用元:出入国在留管理庁|在留カードとは?
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/whatzairyu_00001.html

外国人雇用状況の届出

留学生のアルバイトを雇用する場合、雇い入れ時と離職時にハローワークで外国人雇用状況の届出をする必要があります。雇用保険被保険者となる留学生の場合は、雇い入れの翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届を提出することで、外国人雇用状況の届出についても実施したものとみなされます。雇用保険被保険者とならない外国人の場合は、雇い入れの翌月末までに外国人雇用状況届出書を提出します。留学生が雇用保険の被保険者になる場合とならない場合の条件については、以下をご確認ください。

雇用保険被保険者に関する具体例

引用:厚生労働省|被保険者に関する具体例
(URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000175909.pdf

参考:厚生労働省|外国人雇用状況の届出について
(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html

留学生雇用は入管法令違反に注意

留学生雇用は入管法と労働法違反に注意

留学生が取得する資格外活動の包括許可は、風俗営業等を除き、どのような業務にも従事することが認められるため、業務の内容が原因で不法就労と判断される可能性は低いです。ただし、28時間の就労時間制限や資格外活動許可そのものの有効性が原因で、入管法違反に該当する可能性があります。以下に、留学生を雇用する際に入管法令違反にならないように気を付けるべきことと、その対策を紹介します。

アルバイトの掛け持ちを確認する

資格外活動の包括許可の就労時間制限は1週28時間です。アルバイトのシフトを組む際には、この制限を超えないようにするのはもちろん、アルバイトの掛け持ちにも気を配る必要があります。28時間を超えない範囲であれば、掛け持ちをするか否かの判断は留学生の自由なので、禁止することはできません。

しかし、留学生が希望する1週あたりの労働時間などをあらかじめ確認し、可能な限り希望通りになるようシフトを組むことで、掛け持ちの必要がないと判断してもらうことができる可能性があります。例えば、一つ目のアルバイト先で留学生が希望する1週あたりの労働時間が25時間であるにも関わらず、実際の労働時間が15時間である場合、多くの留学生は2つ目のアルバイトを探すでしょう。面接時や雇用開始後にしっかりとコミュニケーションを取ることで、双方が希望する労働条件のミスマッチを防ぐことができる可能性が高まります。

なお、仮に28時間の就労時間制限を超えた場合、留学生本人にとっては在留期間更新不許可のリスクが生じるほか、悪質な場合は在留資格取消処分や退去強制処分、不法就労罪による刑事処分を受ける可能性があります。また、雇用主側にとっては、不法就労助長罪で刑事処分を受ける可能性があります。

不法就労助長罪は、過失のない場合を除き、雇用主が不法就労であることを知らなかったとしても処罰を免れることはできません。そのため、留学生をアルバイトとして雇用する際には、掛け持ちなどで万が一28時間を超えてしまった場合に、雇用主に過失があると判断されないよう、定期的にアルバイト先の掛け持ちの有無を本人に直接確認するなどの対策を取るべきでしょう。

定期的に資格外活動許可の効力を確認する

資格外活動許可を受けていない留学生や許可の有効期間が切れた状態の留学生をアルバイトとして雇用することは、雇用主側にとっても不法就労助長罪に問われるリスクがあります。また、たとえ資格外活動許可の有効期間が残っていても、その留学生が在籍する学校に行っていない場合は許可の効力は失われる可能性があります。そのため、留学生のアルバイトを雇用する際には、必ず定期的に、学生が本来の「教育を受ける活動」を行っていることなどを確認し、資格外活動許可の有効性を判断する必要があります。

例えば、留学生が退学した場合や卒業後に学則上の学校在籍期間が切れた場合、在学中に在留期間更新許可申請で不許可になった場合などは、その学生に引き続きアルバイトをさせることは認められません。

特に、留学生が学校を退学した場合、事前に許可された在留期間が残っていれば即座に在留資格が取り消されるわけではなく、学籍を失ってから3カ月間は日本に在留すること自体に違法性はないため、一定期間内において「留学」の在留資格は有効であっても、資格外活動許可は無効な状態になり得ます。

その間にアルバイトをさせてしまうと、不法就労となり在留資格の取消事由に該当し、在留資格が取り消された場合は、退去強制(強制送還)処分となり得ます。また、雇用主側は不法就労助長罪で処罰される可能性があるため、十分に注意してください。

留学生をアルバイトとして雇用する場合、「学校に在籍して教育を受ける活動を行っていること」と「資格外活動許可が有効であること」の両方を常に満たしている必要があります。そのため、進級や進学、在留期間更新時などのタイミングで定期的に状況の変化がないか確認するよう努めましょう。

まとめ

この記事では、留学生をアルバイトとして雇用するために知っておくべきルールや特徴を解説しました。留学生のアルバイト雇用は、在留資格申請など雇用主側の手続き義務が少なく、外国人雇用の難易度としては比較的低いため、外国人材の活用を検討中の方にはとてもおすすめです。

週28時間の就労時間制限があるため、最初はルールが複雑に感じるかもしれませんが、慣れれば大きな負担なく活躍してもらえるはずです。多言語対応や専門知識の活用など、目的に応じて留学生雇用にチャレンジしてみてください。

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執筆者

安藤祐樹のアバター 安藤祐樹 申請取次行政書士

きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。TOEIC850点。趣味はプログラミングと料理。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

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