執筆者:申請取次行政書士 安藤祐樹
在留カードには、その外国人が「就労可能な在留資格を持っているか」「どのような業務に従事させることができるか」「在留期間はいつまで残っているか」など、企業が外国人を採用する際に確認が必要な情報が記載されています。
この記事では、日本に滞在する中長期在留者(外交、公用、特定活動の一部を除く)が、必ず所持する必要がある「在留カード」の制度概要と各種の手続きについて詳しく解説します。
在留カードとは
在留カードとは、日本国内に滞在する外国人の在留資格や在留期間、氏名、生年月日、住所などが記載された「身分証明書」です。また、在留カードには、その外国人が上陸審査や各種の在留資格申請の際に受けた許可の内容を証明する「許可証」の役割もあります。
わかりやすく言うと、在留カードは運転免許証のようなものです。日本国内の公道で自動車を運転する際に運転免許証の携帯が必要なように、日本に中長期滞在する外国人は在留カードの携帯が義務付けられています。なお、短期滞在で日本に滞在する外国人には在留カードが交付されないため、常にパスポートを携帯する必要があります。
在留カードの記載事項
在留カードには表裏があります。それぞれの基本的な記載事項は以下の通りです。
表面の記載事項
- 氏名、生年月日、性別、国籍・地域
- 住居地(日本国内の主たる住居の所在地)
- 在留資格、在留期間、在留期間満了日
- 許可の種類、許可年月日
- 在留カード番号、交付年月日、在留カードの有効期限
- 就労制限の有無
- 顔写真(16歳以上のみ)
画像の引用元:出入国在留管理庁|在留カードとは?
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/whatzairyu_00001.html)
裏面の記載事項
- 住居地変更がある場合の新住居地、届出年月日
- 資格外活動許可を受けている場合、許可の内容
- 在留資格申請中である場合、申請中である旨
画像の引用元:出入国在留管理庁|在留カードとは?
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/whatzairyu_00001.html)
2つ以上の国籍を持つ場合
2つ以上の国籍を持つ場合、在留カードの国籍・地域欄には、どちらかひとつの国・地域が記載されます。日本に上陸して新たに中長期在留者となった場合は、許可証印を受けたパスポートを発行した国・地域が記載されます。既に日本に滞在している中長期在留者が新たに在留カードの交付を受けた場合は、古い在留カードに記載されている国・地域が新しいカードにもそのまま記載されます。
短期滞在などで日本国内に滞在している外国人が、新たに中長期在留者になった場合、在留資格変更許可申請などの際に提示したパスポートの発行国が在留カードの国籍・地域欄に記載されます。また、難民認定や補完的保護対象者として新たに中長期在留者となった場合、難民認定証明書または補完的保護対象者認定証明書に記載されている国名が在留カードに記載されます。
氏名欄に漢字を使用する場合の申し出
在留カードの氏名欄は原則としてローマ字で表示されますが、各種の在留資格申請や在留カードの再交付申請の際に「在留カード漢字氏名表記申出」を行うことで、漢字での氏名表記が可能です。その際、立証資料として「本国において氏名に漢字が使用されていることを証する資料」の提出が求められるため、誰でも漢字表記が可能なわけではありません。
なお、漢字氏名表記申出の手数料は、在留資格申請や住居地以外の記載事項変更届出と同時に行う場合は無料です。ただし、漢字氏名表記申出のみを単独で行う場合は、交換希望による在留カードの再交付申請として扱われるため、1,600円の手数料がかかります。
なお、在留カードで使用可能な漢字は法務省告示に定められている正字のみです。正字と認められない簡体字などは、正字に置き換える必要があるため、外国人が本国で使用している漢字をそのまま使用できない場合があります。
参考:法務省告示第五百八十二号|在留カード等に係る漢字氏名の表記等に関する告示
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/content/930002422.pdf)
在留カードが交付される在留資格
在留カードは、日本に滞在するすべての外国人に交付されるわけではありません。在留カードは、日本に在留資格をもって在留する外国人のうち、以下に該当する者を除いた外国人に交付されます。
- 3カ月以内の在留期間が決定された者
- 短期滞在の在留資格で滞在する者
- 外交または公用の在留資格で滞在する者
- 台湾日本関係協会の日本事務所の職員とその家族
- 駐日パレスチナ総代表部の職員とその家族
- 特定活動53号(デジタルノマド)
- 特定活動54号(デジタルノマドとして在留する者の配偶者・子)
参考:出入国在留管理庁|在留資格「特定活動」(デジタルノマド(国際的なリモートワーク等を目的として本邦に滞在する者)及びその配偶者・子)
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities10_00001.html)
携帯義務、提示義務について
在留カードを交付された外国人は、常に在留カードを携帯していなければなりません。したがって、外国人を雇用する企業等の職員が、外国人に代わって在留資格申請を取次ぐ場合などには、在留カードを預かる際に、必ず表裏のコピーと預かり証を渡し、携帯義務違反とならないよう配慮する必要があります。
※16歳未満の外国人には、在留カードの携帯義務はありません。
また、外国人は、国または地方公共団体の職員から職務の執行のために在留カードの提示を求められた場合、これを提示しなければなりません。在留カード提示義務を負う国または地方公共団体の職員は以下の通りです。
外国人が在留カード提示義務を負う対象者
- 入国審査官
- 入国警備官
- 警察官
- 海上保安官
- 税関職員
- 公安調査官
- 麻薬取締官
- 住民基本台帳に関する事務に従事する市町村の職員
- 公共職業安定所の職員
住所変更など記載事項変更手続き
在留カードの記載事項が変更となった場合は、出入国在留管理庁長官に対して届出をしなければなりません。住所変更の場合とそれ以外の在留カード記載事項変更の場合で手続きの方法が異なるため、それぞれ分けて解説します。
新たに中長期在留者となった場合
日本への入国が許可されて中長期在留者となった外国人は、住居地を定めてから14日以内に市区町村役場に届け出なければなりません。その際、在留カードを提出して手続きを行い、届出完了後に住居地が記載された在留カードが返還されます。この手続きは住民基本台帳法に基づく届出ですが、市区町村役場で届出を行うことで、入管への届出も完了したものとみなされます。
在留カードの交付対象ではない在留資格(短期滞在など)から在留資格変更許可申請などで新たに中長期在留者となった場合も、住居地を定めてから14日以内に市区町村役場に届け出を行います。許可の前から住居地を定めている場合は、許可の日から14日以内に手続きをする必要があります。
在留カードの住所変更手続き
日本に継続して滞在する中長期在留者が新たに住居地を定めた場合は、新住居地に移転した日から14日以内に市区町村役場に届け出なければなりません。その際、在留カードを提出して手続きを行い、届出完了後に新住居地が記載された在留カードが返還されます。この手続きは住民基本台帳法に基づく届出ですが、市区町村役場で届出を行うことで、入管への届出も完了したものとみなされます。
住所以外の記載事項変更の手続き
住居地以外の記載事項を変更する場合は、変更が生じた日から14日以内に地方出入国在留管理官署(本局、支局、出張所)に届け出ます。提出書類は変更する内容により異なりますが、入管の窓口では在留カードだけでなくパスポートの提示も必要となりますので、注意が必要です。
在留カード紛失・汚損時の再交付手続き
紛失時の再交付申請
在留カードの交付を受けている外国人は、紛失、盗難、滅失などにより在留カードの所持を失ったときは、その事実を知った日から14日以内に再交付の申請をしなければなりません。再交付の申請先は、申請人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署(本局、支局、出張所)です。
汚損時の再交付申請
在留カードの交付を受けている外国人は、在留カードが汚損、毀損またはカード内の電磁的記録が毀損した場合は、再交付の申請をすることができます。この手続きは義務ではなく任意であるため、申請期限はありません。ただし、入管から在留カードの再交付申請命令を受けたときは、命令から14日以内に再交付申請をしなければなりません。
在留カードの有効期間更新手続き
在留カードの有効期間は、在留資格の種類や年齢などにより異なり、以下の4種類の区分に応じて決定されます。
- 永住者または高度専門職2号・・・在留カードの交付日から7年
- 在留カード交付日に16歳未満の永住者・・・16歳の誕生日の前日
- 永住者または高度専門職2号以外で16歳以上の者・・・在留期間の満了の日
- 永住者または高度専門職2号以外で16歳未満の者・・・在留期間の満了日または16歳の誕生日の前日のいずれか早い日
更新のタイミング
在留カードの有効期間が在留期間満了の日である場合は、特別な手続きを行う必要はありません。引き続き日本に在留することを希望する場合は、在留期間更新許可申請を行うことで在留カードの有効期間も更新されます。なお、在留期間更新許可申請の審査中に在留期間満了日が過ぎてしまった場合、特例期間として、審査の処分または在留期間満了日から2カ月を経過するまでのいずれか早い日までは従前の在留資格の活動を継続できます。その際、在留カードの有効期間も特例期間終了まで自動で延長されます。
永住者や高度専門職2号で日本に滞在する外国人、または在留カードの有効期間が16歳の誕生日の前日となっている者は、在留カードの有効期間満了日の2カ月前から満了の日までの間に有効期間の更新申請をしなければなりません。申請先は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署(本局、支局、出張所)です。
永住者が在留カードの更新を忘れてしまった場合
永住者や高度専門職2号の在留資格を持つ外国人が在留カードの更新を忘れてしまった場合は、速やかに地方出入国在留管理官署(本局、支局、出張所)で更新申請を行ってください。永住者や高度専門職2号の場合、在留カードの有効期間はありますが、在留期間の定めはないため、不法残留(オーバーステイ)になることはありません。ただし、在留カードの有効期間更新は入管法上の義務であるため、気づいたら必ず更新手続きを行いましょう。
在留カード更新・再交付申請手数料
在留カードの更新や再交付の申請手数料は、原則無料です。ただし、在留カードの手続きは他の申請に付随して行うことが多いため、交換理由によっては別途、主目的となる申請の手数料が発生する場合があります。以下に、在留カードの更新・再交付を伴う主な申請の手数料をお伝えします。
- 在留期間更新許可申請・・・4,000円
- 在留資格変更許可申請・・・4,000円
- 永住許可申請・・・8,000円
- 在留カードの記載事項変更の届出・・・無料
- 在留カードの有効期間満了時の更新申請・・・無料
- 紛失等による在留カード再交付申請・・・無料
- 汚損等による在留カード再交付申請・・・無料
- 在留カード漢字氏名表記申出・・・無料(単独で行う場合は1,600円)
- 交換希望による在留カード再交付申請・・・1,600円
在留カードに関する違反行為
在留カードに関するルールに違反すると、退去強制処分や刑事罰に処せられる可能性があります。退去強制処分とは、退去強制事由に該当する外国人を日本から強制的に退去させるための行政処分です。
退去強制処分
在留カードに関する違法行為により退去強制処分となる場合は、「出国命令」ではなく「強制送還」で日本から退去することになります。収容されるか監理措置となるかは、主任審査官の審査によって決定されます。在留カード関連の退去強制事由は以下の通りです。
在留カード関連の退去強制事由一覧
- 在留カードまたは特別永住者証明書を偽変造または提供し、収受し、若しくは所持する行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者(入管法第二十四条第一項第三の五号イ)
- 行使の目的で、他人名義の在留カードまたは特別永住者証明書を提供し、収受し、若しくは所持し、または自己名義の在留カードを提供する行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者(入管法第二十四条第一項第三の五号ロ)
- 偽変造された在留カードもしくは特別永住者証明書または他人名義の在留カードもしくは特別永住者証明書を行使し、そそのかし、またはこれを助けた者(入管法第二十四条第一項第三の五号ハ)
- 在留カードまたは特別永住者証明書の偽変造の目的で、器械または原料を準備し、そそのかし、またはこれを助けた者(入管法第二十四条第一項第三の五号ニ)
- 中長期在留者で入管法上の届出義務違反、在留カードの更新・再交付申請義務違反、在留カードの受領・提示義務違反の罪により懲役に処せられた者(入管法第二十四条第一項第四の四号)
入管法の罰則規定
入管法の罰則規定のうち、在留カードに関するものは以下の通りです。
- 新規上陸時または住居地変更時の届出、住居地以外の在留カード記載事項の届出、所属機関等の届出に関し虚偽の届出をした者・・・一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金(入管法第七十一条の二第一号)
- 在留カードの有効期間の更新、紛失等による再交付申請、汚損等による再交付申請命令の規定に違反した者・・・一年以下の懲役または二十万円以下の罰金(入管法第七十一条の二第二号)
- 新規上陸または在留資格変更等に伴う住居地の届出をしなかった者・・・二十万円以下の罰金(入管法第七十一条の五第一号)
- 住居地変更後、新住居地の届出をしなかった者・・・二十万円以下の罰金(入管法第七十一条の五第二号)
- 住居地以外の記載事項変更、在留カード返納(死亡時を除く)、所属機関等の届出の規定に違反した者・・・二十万円以下の罰金(入管法第七十一条の五第三号)
- 行使の目的で在留カードを偽造または変造した者・・・一年以上十年以下の懲役(入管法第七十三条の三第1項)
- 偽造または変造の在留カードを行使した者・・・一年以上十年以下の懲役(入管法第七十三条の三第2項)
- 行使の目的で偽造または変造の在留カードを提供し、または収受した者・・・一年以上十年以下の懲役(入管法第七十三条の三第3項)
- 行使の目的で偽造または変造の在留カードを所持した者・・・五年以下の懲役または五十万円以下の罰金(入管法第七十三条の四)
- 在留カードの偽変造の目的で器械または原料を準備した者・・・三年以下の懲役または五十万円以下の罰金(入管法第七十三条の五)
- 他人名義の在留カードを行使した者・・・一年以下の懲役または二十万円以下の罰金(入管法第七十三条の六第1項第一号)
- 行使の目的で、他人名義の在留カードを提供し、収受し、又は所持した者・・・一年以下の懲役または二十万円以下の罰金(入管法第七十三条の六第1項第二号)
- 行使の目的で、自己名義の在留カードを提供した者・・・一年以下の懲役または二十万円以下の罰金(入管法第七十三条の六第1項第三号)
- 入管から交付、または市町村から返還される在留カードを受領しなかった者・・・一年以下の懲役または二十万円以下の罰金(入管法第七十五条の二第一号)
- 在留カードの提示義務がある場合で、在留カードの提示を拒んだ者・・・一年以下の懲役または二十万円以下の罰金(入管法第七十五条の二第二号)
- 在留カードの携帯義務がある場合で、在留カードを携帯しなかつた者・・・二十万円以下の罰金(入管法第七十五条の三)
- 外国人が十六歳に満たない場合または疾病その他の事由により各種の届出、申請義務の履行ができない場合に、入管法が定める代理義務者が届出、申請、在留カードの受領をしなかった場合・・・五万円以下の過料(入管法第七十七条の三)
在留カードの偽造について
企業等が外国人を採用する際、その外国人が所持する在留カードが偽造である場合、企業側にも大きなリスクが生じます。就労が認められていない在留資格を持つ外国人や不法滞在している外国人を雇用すると、その後の外国人労働者の受け入れ許可が取得できなくなったり、不法就労助長等の罪に問われる可能性があります。不法就労に加担してしまうリスクを防ぐために、在留カードの偽造を確認する方法を3つご紹介します。
在留カード等番号失効情報照会
在留カード等番号失効情報照会は、在留カード番号と有効期間を入力することで、その在留カードが有効であるかを入管のデータベースで確認できるウェブサイトです。在留カード等番号失効情報照会を利用すると、「失効済みの在留カード」や「存在しない番号・有効期間の在留カード」を見つけることができます。ただし、実在する本物の在留カードをコピーした偽造在留カードを見分けることはできません。
画像引用元:出入国在留管理庁|在留カード等番号失効情報照会
(URL:https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx)
ホログラム等の偽変造防止対策
在留カードには、MOJ(Ministry of Justiceの略)の文字が浮き出るホログラムや色の変化などの偽変造防止対策が施されています。
画像引用元:出入国在留管理庁|「在留カード」及び 「特別永住者証明書」の見方
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/content/930001578.pdf)
関連サイト:厚生労働省|「在留カード」及び 「特別永住者証明書」の見方
(URL:https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-foreigner/var/rev0/0109/8781/201372911395.pdf)
在留カード等読取アプリケーション
在留カード等読取アプリケーションは、在留カードの偽造技術の精巧化に対処するため、2020年に公開されたアプリケーションです。パソコン版はWindowsとMacOS向け、スマートフォン版はAndroidとiOS向けがリリースされており、すべて無料で利用可能です。なお、パソコン版を使用する場合は在留カードを読み取るためのカードリーダー/ライターが必要です。スマートフォン版の場合は、NFC対応端末を使用する必要があります。
画像引用元:出入国在留管理庁|在留カード等読取アプリケーション
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/content/001406558.pdf)
参照:出入国在留管理庁|在留カード等読取アプリケーション サポートページ
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/rcc-support.html)
まとめ
ここまで在留カードの制度概要や各種の届出手続き、在留カードに関する義務などについて解説しました。在留カードは、外国人が日本で行うことができる活動を分類した「在留資格」という目には見えない法的な概念を視覚化したものです。
外国人の採用をする際は、必ず在留カードの内容を確認して、業務内容と在留資格の適合性を判断してから雇用契約を結ぶようにしましょう。また、外国人を継続的に雇用していく中でも、在留期間や在留資格の種類などは常に最新の情報を把握しておくことが重要です。この記事が外国人の採用を検討する企業担当者の方にとって少しでもお役に立てば幸いです。