査証とは?外国人が日本入国前に大使館等で行うビザ申請の発給基準についてわかりやすく解説します

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執筆者:申請取次行政書士 安藤祐樹

外国人従業員の雇用や国際結婚などにより、外国人が日本に新規入国する場合、あらかじめ大使館等で査証(ビザ)の取得が必要です。新規入国の際の行政手続きは、「旅券(パスポート)発給申請」「査証(ビザ)発給申請」「在留資格認定証明書交付申請」「上陸申請」など多岐にわたりますが、手続きの目的や申請先などはそれぞれ異なります。

この記事では、大使館等の在外公館が取り扱う「査証(ビザ)」に関する手続きの方法や発給基準、ビザ免除制度など、外国人を受け入れる上で知っておくべきビザの基礎知識について解説します。

目次

査証(ビザ)とは

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出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)第六条第一項には、「本邦に上陸しようとする外国人は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない」と規定されています。

査証とは、大使館や領事館など海外にある日本の在外公館が、日本国内の入国審査官に対し、「その外国人の所持する旅券が有効であり、日本への入国が適当であること」を伝達する役割を持つ推薦状のようなもので、ビザとも呼ばれています。

なお、査証は、その外国人の上陸許可を保証するものではなく、最終的な上陸の可否の決定は空港等で入国審査官が行います。そのため、有効な査証を受けたパスポートを所持していても、他の要件に適合していない場合は入国を拒否される可能性があります。また、入国審査官から上陸の許可を受けて日本に上陸した後は、その外国人の日本滞在の根拠は在留資格と在留期間に紐づくことになり、査証は効力を失います。

査証(ビザ)の種類

査証には、入国目的に応じてさまざまな種類が存在します。査証事務の法的根拠は個別の法律に定められているわけではなく、外務省が定めた査証事務処理規則などの非公開の内部規則に基づいて運用されています。2024年現在、外務省のウェブサイト上で公表されている査証の種類は以下の9種類です。

ビザの種類入国目的入国後の在留資格
短期滞在ビザ観光、商用、知人・親族訪問など90日以内の滞在を目的とする査証。就労不可。「短期滞在」
高度専門職ビザ高度専門職の在留資格で就労する外国人とその家族に対し発給される査証。必ず事前に在留資格認定証明書の取得が必要。「高度専門職1号(イ・ロ・ハ)」「高度専門職1号(特別高度人材)」「特定活動(高度専門職外国人の家事使用人、親、就労する配偶者など)」「家族滞在(高度専門職外国人の扶養を受ける配偶者、子)」
就業ビザ
就労目的で日本に入国することを希望する外国人に対し発給される査証。
「教授」「芸術」「宗教」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能」
一般ビザ就労以外の目的で長期滞在するために日本に入国することを希望する外国人が取得する査証。「文化活動」「留学」「研修」「家族滞在」「技能実習1号(イ・ロ)」
特定ビザ入管法別表二の表の在留資格または特定活動(高度専門職関係、外国人起業家関係、医療滞在関係を除く)で入国することを希望する外国人に対し発給される査証。「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」「特定活動」
起業ビザ経済産業省の定める告示に沿って地方公共団体から起業支援を受ける外国人起業家に対し発給される査証。「特定活動(外国人起業家とその不要を受ける配偶者、子)」
外交ビザ外交使節団の構成員、外交伝書使などに対し発給される査証。「外交」
公用ビザ外交使節団の事務、技術職員、役務職員などに対し発給される査証。「公用」
医療滞在ビザ日本において治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)及び同伴者に対し発給される査証。「特定活動(医療滞在とその同伴者)」

参照元:外務省|ビザ
(URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/index.html

永住ビザ、就労ビザ、留学ビザ、結婚ビザは存在しない

外国人が日本に滞在するためには、入管法に規定されている活動内容に応じた在留資格の取得が必要です。しかし、一般的には在留資格はビザと呼ばれることが多く、「永住ビザ」「就労ビザ」「留学ビザ」「結婚ビザ」などの言葉が定着しています。しかし、本来ビザという言葉には査証以外の意味はなく、入国時点で失効するため、外国人が日本に滞在するための法的根拠である在留資格の英訳としては誤用です。

例えば、「永住者」の在留資格の意味で「永住ビザ」という言葉が使用されますが、「永住者」の在留資格は、日本国内での継続的な在留を経て許可されるものであり、新規入国時に取得することはできません。つまり、「永住ビザ」という言葉には、本来のビザ(査証)を意味する入国時の推薦状としてのニュアンスは含まれておらず、在留資格のみを意味する言葉として使用されています。

また、日本に留学している外国人学生は「留学ビザ」を持っていると表現されることがありますが、「留学」の在留資格を取得する予定の外国人が新規入国時に申請するビザ(査証)は「一般ビザ」です。日本に留学することを希望する外国人は、あらかじめ在外公館で「一般ビザ」を取得し、日本に上陸する際に「留学」の在留資格を取得します。

とはいえ、日常の会話でビザと在留資格を混同しても大きな問題が生じる可能性は低いです。ただし、入管手続きについて情報収集を行う際や申請書類を作成する際には、これらの概念を正確に理解していないと審査で不利益な結果に繋がる可能性があるため注意が必要です。外国人の在留資格申請等に関わる方は、ビザと在留資格の違いについてしっかり理解しておきましょう。

以下の表は、一般用語として定着している呼称と、新規入国時に取得する正式な意味のビザ(査証)、そして入管法に規定されている在留資格の比較表です。

一般用語として定着している呼称新規入国時に必要なビザ(査証)※入国前に取得入管法上の在留資格
永住ビザなし
※永住者として新規入国することはできない
「永住者」
就労ビザ就業ビザ「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興行」「技能」など
留学ビザ一般ビザ「留学」
結婚ビザ特定ビザ「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」
観光ビザ短期滞在ビザ「短期滞在」

在留資格制度について、詳細が知りたい方は以下の記事をご確認ください。

査証(ビザ)免除とは

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外国人が日本に入国する際に必要な「査証(ビザ)」は、一定の要件を満たすことで免除される場合があります。ビザに関する免除制度は主に「短期滞在」の在留資格を取得する場合に適用されます。その他に、外交目的や国連用務に関するビザ免除の制度も存在します。以下、それぞれについて解説します。

短期滞在のビザ免除

観光、商用、知人・親族訪問などの目的で日本に入国し、90日以内の期間において就労を伴わない活動をする場合、「短期滞在」の在留資格を取得することとなります。その際、原則として、事前に在外公館で「短期滞在ビザ」を取得する必要がありますが、2カ国間の「査証免除取極」を締結している国の場合は、例外的にビザの取得を免除されます。

現在、日本政府は71の国・地域に対してビザ免除措置を実施しており、これらの国・地域のパスポートを持つ外国人は、入国審査の際に「有効な査証を受けた旅券」の所持を求められることなく「短期滞在」の上陸審査を受けることができます。2024年末時点で日本とビザ免除の取極を締結している国は以下の通りです。

エリア国・地域名ビザ免除の個別の条件滞在日数
アジアインドネシア
事前に在外公館でIC旅券の登録を行った者のみ90日以内
タイIC旅券を所持する者のみ15日以内
マレーシア90日以内
台湾身分証番号が記載された台湾護照(旅券)を所持する者のみ90日以内
香港香港特別行政区(SAR)旅券を所持する者、英国海外市民(BNO)旅券を所持する者(香港居住権所持者)のみ90日以内
マカオマカオ特別行政区旅券を所持する者のみ90日以内
シンガポール、韓国特別な条件なし90日以内
ブルネイ14日以内
北米米国、カナダ特別な条件なし90日以内
中南米メキシコ特別な条件なし90日を超えて滞在する場合、更新許可申請を行うことで最大6カ月滞在可能
パナマ、ブラジルIC旅券を所持する者のみ90日以内
バルバドス機械読取式旅券を所持する者のみ90日以内
アルゼンチン、ウルグアイ、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、スリナム、チリ、ドミニカ、バハマ、ホンジュラス特別な条件なし90日以内
オセアニアオーストラリア、ニュージーランド特別な条件なし90日以内
中東アラブ首長国連邦IC旅券を所持する者のみ30日以内
イスラエル特別な条件なし90日以内
カタール事前に在外公館でIC旅券の登録を行った者のみ90日以内
トルコ機械読取式旅券を所持する者のみ90日以内
アフリカチュニジア、モーリシャス特別な条件なし90日以内
レソト機械読取式旅券を所持する者のみ90日以内
欧州アイスランド、アンドラ、イタリア、エストニア、オランダ、キプロス、ギリシャ、クロアチア、サンマリノ、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、北マケドニア、マルタ、モナコ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルク特別な条件なし90日以内
アイルランド、オーストリア、スイス、ドイツ、リヒテンシュタイン、英国特別な条件なし90日を超えて滞在する場合、更新許可申請を行うことで最大6カ月滞在可能
セルビアIC旅券を所持する者のみ90日以内

参考:外務省|ビザ免除国・地域(短期滞在)
(URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html

外交・公用・国連用務のビザ免除制度

通常、「外交」や「公用」の在留資格を取得する場合、事前に在外公館でビザの申請が必要ですが、2024年末時点において、日本は相互主義に基づき、62カ国と「外交ビザ」「公用ビザ」に関する免除取極を締結しています。なお、外交・公用に関するビザ免除取極を結んでいない国の者であっても、「短期滞在」のビザ免除国のパスポートを所持していれば、事前にビザを取得することなく「短期滞在」の在留資格で日本に上陸することは可能です。しかし、その場合、在留期間は「短期滞在」の期間に限定され、また、指紋等の個人識別情報の提供義務があります。

また、日本政府は、国際連合通行証(国連レッセ・パッセ)所持者が国籍国のパスポートを携帯し、国連用務のために訪日する場合についても、62カ国とビザ免除の取極を締結しています。なお、国連用務に関するビザ免除取極を結んでいない国の者であっても、国連レッセ・パッセ所持者で「短期滞在」のビザ免除国のパスポートを携帯した上で日本に上陸する場合、活動内容や期間が「短期滞在」の在留資格の許可範囲に該当していれば、事前にビザを取得することなく上陸申請を行うことが可能です。

参考:外務省|外交・公用旅券所持者に対する外交・公用ビザ免除国
(URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page22_002019.html

参考:外務省|国際連合通行証(国連レッセ・パッセ)所持者が国籍国の旅券も携行して
国連の用務で訪日する場合のビザの取扱い
(URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page22_003329.html

査証(ビザ)の原則的発給基準

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ビザの発給事務を所掌する外務省は、審査の詳細な基準について公表していませんが、「ビザの原則的発給基準」として、以下の要件をすべて満たし、かつ、ビザ発給が適当と判断される場合にビザが発給されると説明しています。

要件①:旅券が有効であること

在外公館でビザの発給を受けるためには、有効なパスポートを所持していなければなりません。外務省は、パスポートの残存有効期間が1年未満の場合、ビザ発給申請の前に新しいパスポートへの切り替えを推奨しています。なお、ビザ発給申請時に必要なパスポートの残存有効期間は、渡航目的などにより異なるため、明確な期間は示されていません。

要件②:帰国の権利が確保されていること

日本に渡航するためのビザの発給要件には、「本国への帰国または在留国への再入国の権利・資格が確保されていること」という基準があります。日本の入管法は、外国人が永住を目的として日本に新規上陸することを認めていません。そのため、ビザ申請をする外国人は、入国前の時点で日本から出国する権利を確保していることが求められます。

要件③:提出書類が適正である

ビザの発給申請の際は、適正な申請書類を提出しなければなりません。例えば、申請書の記載内容に漏れや誤りがある場合や、提出資料の真正性や申告内容の信ぴょう性に疑いがある場合は、ビザ発給拒否の原因となり得ます。

要件④:活動内容が入管法の在留資格と在留期間に適合しているか

ビザ発給申請をする外国人が日本で行おうとする活動が、入管法に規定されている在留資格および在留期間に適合していなければ、発給を受けることはできません。この在留資格に関する要件適合性の判断は、本来は法務省(入管庁)の所掌事務であるため、通常は事前に入管庁に在留資格認定証明書交付申請を行い、ビザ発給申請の際に在留資格認定証明書を提出することで適合性を立証します。

東京地裁平成22年7月8日判決において、査証事務処理規則の一部が公開されていますが、その中には「在留資格認定証明書を所持する者からの申請については、査証規則7条1項3号に適合しているかどうかについての疎明資料の提出を求めない」旨の記載があります。つまり、事前に在留資格認定証明書交付申請において審査した内容は、ビザ発給申請の際には詳細な審査をすることなく、在留資格認定証明書の提出をもって適合性を判断されることとなります。

なお、事前に在留資格認定証明書を取得せずにビザ発給申請をする場合、在外公館が単独でビザ発給要件の適合性を判断できず、「査証事前協議」という外務省と法務省の協議が行われる可能性があり、審査期間が長期化する場合があります。そのため、「短期滞在」の目的以外で入国する場合は、できる限り事前に在留資格認定証明書を取得しておくことをおすすめします。

要件⑥入管法の上陸拒否事由に該当していないか

申請人が上陸拒否事由(入管法第5条第1項各号)に該当する場合は、ビザの発給を受けることはできません。上陸拒否事由とは、日本に上陸することが好ましくないとされる各種の事情を列挙したもので、「感染症患者」「麻薬所持者」「銃砲刀剣類所持者」「フーリガン」など、全14号までの拒否事由の規定があります。

上陸拒否事由の該当性は、在留資格認定証明書交付申請では、詳細に審査されないため、ビザ発給申請の際に初めて発覚することが多いです。

査証(ビザ)発給申請の流れ

査証(ビザ)発給申請の流れの画像

ビザの発給を受けるためには、必ずパスポートが必要です。また、短期滞在で入国する場合を除き、基本的には事前に在留資格認定証明書を取得しておかないとビザ申請の審査で不利になる場合があります。そのため、中長期の滞在を目的とする場合は、ビザ以外の手続きも含めた各書類の取得申請について一連の流れを押さえておく必要があります。

外国人が日本に入国する流れ

外国人が日本に入国する際に、空港などで入国審査官に提出する主な資料は「パスポート」「在留資格認定証明書」「査証」「外国人入国記録(EDカード)」の4点です。「外国人入国記録(EDカード)」は日本に向かう飛行機の中や到着後の空港で記入する書類ですが、それ以外の書類は出発前に用意する必要があります。それぞれの書類収集のスケジュールのイメージは以下の通りです。

パスポート、在留資格認定証明書、査証発給申請のスケジュールのイメージ

まず、ビザ(査証)発給申請の前段階で、在留資格認定証明書とパスポートを取得する必要があります。取得の順序はどちらが先でも構いませんが、在留資格認定証明書交付申請は審査期間が1~3カ月と長いため、パスポート未取得の場合は、先に在留資格認定証明書交付申請を行い、審査中に並行してパスポートの申請を行うのが良いでしょう。

在留資格認定証明書とパスポートを取得したら、続いてビザ発給申請を行います。在留資格認定証明書とビザはどちらも有効期間が3カ月であるため、審査期間と有効期間を考慮の上、入国予定日から逆算してそれぞれの申請をする必要があります。

なお、短期滞在の目的で日本に入国する場合は在留資格認定証明書は不要であるため、パスポートを所有している場合は、そのまま在外公館でビザ発給申請を行うことになります。ビザ免除取極を締結している国の方が短期滞在で入国する場合は、パスポートを所有していればそのまま飛行機に乗って空港で上陸審査を受けることが可能です。

以下の表は、それぞれの書類取得申請時の審査期間と有効期間の一覧です。

資料の種類審査期間有効期間
パスポート約1~2週間
※国により異なる
5年または10年
在留資格認定証明書約1~3カ月3カ月
ビザ(査証)約5業務日
※在留資格認定証明書を提出しない場合やその他の理由により長期化する可能性あり
3カ月

ビザの申請先・提出書類

ビザの発給申請は、大使館や総領事館などの在外公館で行います。申請方法は、本人または代理人が窓口で手続きする方法のほか、オンラインや代理申請機関経由で申請する方法があります。受付可能な申請方法は各国の在外公館により異なるため、詳細は大使館等に確認しましょう。

また、ビザ発給申請の提出書類は「取得予定の在留資格」「外国人の国籍国」などにより異なります。例えば、就業ビザを取得する場合、基本的な提出書類は「パスポート」「申請書」「写真」「在留資格認定証明書」の4点ですが、中国籍の方は「戸口簿写し」「暫住証または居住証明書」の提出が必要です。外務省は、ビザ発給に必要な提出書類の詳細は、各国に所在する大使館等のウェブサイトで確認することを推奨しています。

参考:外務省|ビザ
(URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/index.html

査証(ビザ)発給申請の審査期間

査証(ビザ)発給申請の審査期間の画像

ビザ発給審査の標準処理期間は、内容に特段の問題がない場合、申請受理の翌日から起算して5業務日とされています。ただし、申請内容に疑義が生じている場合などは、本人の面接や各行政機関等への照会により時間がかかる場合があります。

また、在留資格認定証明書を提出せずに中長期滞在を目的とするビザ発給の申請を行った場合、入管法が規定する在留資格や在留期間との適合性を詳細に審査されるため、審査完了まで3カ月以上かかる可能性があります。中長期滞在者として日本に入国する場合は、あらかじめ在留資格認定証明書交付申請を行い、その後にビザ発給申請を実施することをおすすめします。

査証(ビザ)発給拒否について

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ビザ発給審査の結果、基準に適合しないと判断された場合は、発給拒否処分が下されます。その場合、日本に入国することは叶いませんが、ビザの不発給については処分性がないと判示されている裁判例が多くあり、審査結果に不服があっても、司法手続きで争うことはできません。また、再申請についても以下の理由により困難が伴うため、査証官に疑念を抱かれかねない事実がある場合は、状況を改善してから申請を検討する方が良いでしょう。

発給拒否の理由は開示されない

査証事務処理規則第11条2項には、ビザ発給拒否の処分をした場合であっても拒否の理由を開示しない旨が定められています。これにより、一度ビザの発給拒否処分を受けてしまうと、再申請で拒否事由を払拭することが難しくなります。

在留資格認定証明書を提出してビザ発給審査を受けた場合、ビザの原則的発給基準のうち、「在留資格や在留期間の適合性」に関する疎明資料の提出が不要であるため、「帰国の権利が確保されているか」「入管法の上陸拒否事由に該当していないか」など他の基準に適合していないと判断された可能性が高まります。

ビザ発給拒否の理由を検討するには、「どのような資料の提出を求められたか」「本人の面接など追加審査が実施されたか」「審査の処理期間は標準処理期間内であったか」などの審査状況と、ビザの原則的発給基準を照らし合わせて、できる限り精度を高く理由を推測することが重要です。

6カ月間再申請できない

査証通達第1項には、ビザ発給拒否処分を受けた者から同一の目的で再申請がある場合、原則として6カ月以内は受理しない旨が定められています。その理由として、外務省は「6カ月程度経過しないとビザ申請に係る状況は改善されないと考えられるため」と説明しています。

ただし、人道的理由などにより日本へ渡航する必要が生じた場合、6カ月以内であっても再申請を受理する場合もあるとされています。例えば、日本人配偶者との婚姻や出産などにより、早期に日本に入国する必要性が生じた場合などは、再申請が認められる可能性があります。

まとめ

この記事では、外国人が在外公館で申請する「査証(ビザ)」について解説しました。外国人を雇用するためには、さまざまな行政手続きを行う必要があります。ビザの申請は日本国外で行うものであるため、企業等の職員が申請を代理することはできませんが、あらかじめビザ申請の流れを把握しておくことでスムーズな外国人従業員の受け入れが可能となります。

在留資格認定証明書の取得や上陸のスケジュールなど前後の予定をしっかり把握していれば、ビザ申請の難易度はそこまで高くありません。落ち着いて計画を立てて一つ一つの手続きを進めていきましょう。

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執筆者

安藤祐樹のアバター 安藤祐樹 申請取次行政書士

きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。TOEIC850点。趣味はプログラミングと料理。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

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