執筆者:申請取次行政書士 安藤祐樹
外国人が日本に滞在するためには、在留資格の取得が必要です。「ビザ免除」という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、在留資格とビザは異なる概念であり、原則として在留資格に免除制度はありません。
この記事では、在留資格とビザの違いをはじめ、外国人が日本に入国し、継続的に在留する上で必ず取得が必要な在留資格の基本概要について詳しく解説します。
在留資格とは?制度の基本を解説
在留資格とは、わかりやすく言えば、「外国人が日本に滞在するために取得する活動内容ごとの許可」のことです。海外から日本に入国する外国人は、上陸時に空港等で入国審査を受けて、入国目的に応じた在留資格を取得します。
2024年現在、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)には、29種類の在留資格が定められており、「短期滞在」「留学」「永住者」「技能実習」など活動内容ごとに細かく分類されています。
在留資格とビザ(査証)の違い
ビザとは、日本国外にある在外公館(大使館や総領事館等)により発給される査証のことです。ビザ(査証)は、日本への入国を希望する外国人の旅券が有効であり、その外国人の日本への入国が適当であることを推薦する性質を持っています。ビザ(査証)それ自体は入国のための推薦状のような役割を果たすもので、入国の許可やその後の在留を保証するものではありません。したがって、外国人が日本に入国した後は、ビザ(査証)の役割は終わり、以降は効力を失います。
一方で、在留資格は、外国人が日本に入国した後に行う活動内容ごとの許可のことであり、入国審査官から上陸の許可を受けるタイミングで与えられるものです。外国人は日本に入国した後は、ビザ(査証)ではなく在留資格に基づいて日本国内に滞在します。
一般用語としてのビザ
「観光ビザ」「留学ビザ」「配偶者ビザ」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。これは一般用語としての「ビザ」という言葉が、本来の法律用語としての「ビザ(査証)」とは異なる使われ方をして生じた言葉で、意味はそれぞれ「短期滞在」「留学」「日本人(または永住者)の配偶者等」という在留資格のことを指しています。
実際には、日本国内に滞在する外国人は、ビザを保有しているわけではありませんが、一般用語として広く浸透しているため、在留資格のことをビザと呼んでも日常生活において特段の支障はありません。ただし、入管に提出する文書を作成したり、インターネットや書籍などで手続きについて情報収集する際は、正しく用語の意味を理解しておくことをおすすめします。
在留資格認定証明書とは
在留資格認定証明書とは、日本への入国を希望する外国人からの申請に対し、その外国人が上陸許可の要件の一部を満たしていることを法務大臣があらかじめ審査し、要件適合性を証明するために交付する書類のことです。在留資格認定証明書を所持する外国人は、空港等で行う入国審査の際にこの証明書を提出または提示することで、入国手続きを簡略化することが可能です。
ただし、在留資格認定証明書は、上陸許可の要件の一部に適合していることを証明しているに過ぎないため、この証明書を所持していても必ず上陸の許可がでるわけではありません。在留資格認定証明書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
在留資格制度の必要性
日本の外国人受け入れ政策には「一在留一在留資格の原則」があり、日本に合法的に在留する外国人は必ずひとりひとつの在留資格を持ちます。例えば、日本国内の大学などで教育を受ける留学生が企業に就職する場合、「在留資格変更許可申請」を行い、新たに就労のための在留資格を取得する必要があります。同時に複数の在留資格を保有することはできません。
このような在留管理制度により、出入国在留管理庁(以下、入管)は、日本国内に滞在する外国人が入国後10年、20年と経過し在留状況に変化が生じても、それぞれどのような活動を行っているのか継続的に把握することができます。仮に在留資格制度がない場合、入管政策の最大の目的である「国益に適う外国人の円滑な受け入れ」と「国益に適わない外国人の確実な受け入れ拒否」のどちらも叶わなくなってしまいます。
外国人にとっての在留資格の重要性
在留資格は、外国人が日本に滞在し活動を行うための根拠となるものです。在留資格を失うことは、日本に滞在する権利がなくなることを意味するため、外国人にとって在留資格は、「命の次に大切なもの」と表現されることもあります。
日本に入国し在留を継続する外国人は、「入国時」「在留期間更新時」「在留資格変更時」などに日本国内での在留可否の審査を受ける他、一定の事由が生じた際には「在留資格取り消し」の処分を受ける可能性があります。また、在留期限が過ぎて在留資格を失った状態で不法に滞在し続けていることが発覚した場合は、入管の施設に収容され、退去強制処分となる可能性があります。
在留資格は全29種類
入管法には、全29種類の在留資格が定められています。分類の方法は複数ありますが、この記事では「就労系在留資格」「非就労系在留資格」「地位等類型在留資格」「特定活動」の4つにわけてご紹介します。
就労系在留資格
就労系在留資格とは、入管法に規定されている在留資格のうち、日本国内での就労を目的とした在留資格です。就労系在留資格を保有する外国人は、在留資格ごとに規定されている活動の範囲内で就労することができます。
就労系在留資格 |
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習 |
非就労系在留資格
非就労系在留資格は、就労以外の目的で日本に滞在する外国人に与えられる在留資格です。この在留資格を保有する外国人は、原則日本で就労することはできません。ただし、別途「資格外活動許可」を申請し、許可を受ければ一定の制限の下で収入を得る活動が可能になる場合があります。
非就労系在留資格 | 活動の内容 |
文化活動 | 収入を伴わない学術上または芸術上の活動、日本の文化・技芸の研究、修得の活動(留学、研修に該当するものを除く) |
短期滞在 | 観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習などを短期間行う活動 |
留学 | 日本の大学、専門学校、高校、中学校、日本語学校などで教育を受ける活動 |
研修 | 日本の公私の機関で技能などの修得をする活動(技能実習1号、留学に該当するものを除く) |
家族滞在 | 就労系(外交、公用、特定技能1号、技能実習を除く)または文化活動、留学で滞在する外国人の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動 |
地位等類型在留資格
地位等類型在留資格とは、入管法に規定されている一定の身分または地位を有する者が取得できる在留資格です。この在留資格を保有する外国人は、業務の内容や就労時間など、入管法上の一切の制限を受けることなく就労活動に従事できます。
地位等類型在留資格 | 有する身分または地位 |
永住者 | 法務大臣が永住を認める者 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者、特別養子、日本国籍を持たない日本人の子 |
永住者の配偶者等 | 永住者または特別永住者の配偶者または日本で出生しその後引き続き日本に在留している子 |
定住者 | 法務大臣が特別な理由を考慮し一定期間の居住を認める者 |
特定活動
特定活動とは、法務大臣の権限で個々の外国人に対して活動内容を指定して許可される在留資格です。特定活動には、あらかじめ「特定活動告示」で定められた活動と、個別事情を考慮して許可される告示外の特定活動があります。告示で定められた特定活動の例として、ワーキングホリデーやEPA看護師、EPA介護福祉士、日系四世などがあり、2024年現在、第1号から第54号までの告示が発令されています。
在留資格 | 活動の内容 |
特定活動 | 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動 |
入国前の在留資格取得の流れ
日本国外に居住する外国人が日本に入国を希望する場合は、以下の手順で在留資格を取得します。
申請先:地方出入国在留管理局の窓口
申請先:外国人が居住する国の在外公館の窓口
申請先:空港等の入国審査官
在留資格認定証明書交付申請
高度専門職と特定技能を除き、本来は在留資格認定証明書の取得は任意です。しかし、あらかじめ取得しておくことで後のビザ発給申請や上陸時の審査が簡略化されるため、基本的には必ず取得する書類と考えて差し支えありません。
申請は主に外国人本人ではなく、日本に滞在している代理人が行います。在留資格の種類により代理人として申請できる者は異なりますが、就労系在留資格の場合は、外国人と雇用契約を締結した企業の職員などが入管法上の代理人として規定されています。
在留資格認定証明書交付申請の審査期間は1~3カ月で、証明書の有効期限は交付日から3カ月です。入国予定日から逆算して3カ月前以降に交付されるように調整して申請しましょう。なお、短期滞在の場合は在留資格認定証明書交付申請の制度はありません。
ビザ(査証)発給申請
ビザの発給申請は、その外国人が居住する国にある日本の在外公館(大使館や総領事館など)で行います。有効期限は、ビザ発給の翌日から起算して3カ月です。在留資格認定証明書交付申請と同時に申請することはできないため、スケジュールをしっかりと立てて申請する必要があります。
ビザ発給申請の審査期間は、申請受理の翌日から起算して5業務日程度とされています。ただし、短期滞在以外の在留資格で在留資格認定証明書を提出せずにビザ発給審査を受ける場合、審査が長期間に及ぶ可能性があります。
また、在留資格の種類や国ごとの在外公館の取り決めにより、ビザ発給時に面接審査や法務省等への照会が必要になることがあります。その際は、通常の審査よりも時間がかかるため、余裕を持って申請するようにしましょう。
上陸の申請
日本への入国を希望する外国人は、ビザの発給を受けた後、3カ月以内に日本の空港等で上陸の申請を行い、入国します。上陸審査の際に入国審査官に提出または提示するものは、「パスポート」「ビザ(免除対象の場合は不要)」「在留資格認定証明書(ある場合)」「外国人入国記録(EDカード)」です。上陸審査の許可要件は以下の通りです。
- 旅券が有効であること
- 査証が必要な申請の場合は査証が有効であること
- 日本で行おうとする活動が虚偽のものでないこと
- 入管法の規定する在留資格の活動に該当していること
- 法務省令で定めた上陸許可の基準に適合していること
- 申告する滞在予定期間が法務省令に規定する上限年数以内であること
- 入管法の規定する上陸拒否の事由に該当しないこと
上記の7つの要件のうち③④⑤は、あらかじめ在留資格認定証明書を取得することで、上陸申請時に容易に適合性を立証できます。また、ビザ(査証)発給申請では、その他の要件についても一通り審査されます。このように複数回の審査を段階的に行うことで、入国時の上陸審査がスムーズになります。
不許可になった場合の流れ
在留資格認定証明書交付申請で不交付処分を受けた場合、何度でも申請を繰り返すことが可能です。ただし、不交付の理由を払しょくすることができなければ結果が覆る可能性は低いです。まずは、不交付の理由を正確に把握し、いずれの要件に不適合であったのか、しっかりと確認することが重要です。
ビザ(査証)発給申請で発給拒否処分を受けた場合、6カ月間は再申請ができません。また、発給拒否の理由も開示されません。外務省の公表しているビザの原則的発給基準によると、「パスポートが有効であること」「帰国の権利が確保されていること」「提出書類が適正であること」「在留資格や在留期間の適合性があること」「入管法第5条第1項の上陸拒否事由に該当していないこと」の要件を満たす必要があるとされています。
上陸申請が不許可となった場合、特別審理官に引き渡され、口頭審理を受けることになります。口頭審理の結果、上陸の条件に適合しないと認定された外国人は、認定に服するか異議を申し出るかを選択します。異議を申し出た上で、最終的に上陸が許可されない場合は、退去強制処分となります。
入国後に行う在留資格の手続き
外国人が入国審査官から上陸の許可を受けると、在留資格が与えられるのと同時に一定の在留期間が決定されます。以降は、在留期限の3カ月前以降に「在留期間更新許可申請」を行う他、在留状況の変化などに応じて各種の申請手続を行います。また、日本に滞在する外国人は、在留資格を維持するために入管法上の義務を履行する必要があります。
在留期間更新許可申請
在留期間更新許可申請とは、日本に滞在する外国人が、保有する在留資格の変更を伴わず、在留期間のみ更新する場合に行う手続きです。在留期間更新の時期は、在留期限の3カ月前から在留期間満了日までの間です。在留期間更新許可申請の審査中に在留期限が過ぎた場合、「在留期限から2カ月」または「許可(不許可)処分」のいずれか早い方が到来するまでは「特例期間」として、引き続き従来の在留資格の活動を継続することが可能です。
在留資格変更許可申請
在留資格変更許可申請とは、日本に滞在する外国人の在留目的が変わった場合に行う手続きです。例えば、日本国内の大学を卒業した留学生がIT企業に就職し、エンジニアとして活動する場合は、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に変更します。
在留資格変更の申請時期は、在留資格の変更事由が生じたときから在留期間満了日までの間です。在留資格変更許可申請も更新許可申請と同様に、審査中に在留期限が過ぎた場合は、「在留期限から2カ月」または「許可(不許可)処分」のいずれか早い方が到来するまで「特例期間」として、日本国内に引き続き滞在することが可能です。ただし、先述の例のように留学生が就職した場合、特例期間中に就職後のエンジニアとしての活動ができるわけではないため、注意が必要です。
資格外活動許可申請
資格外活動許可申請とは、就労や留学などの在留資格で滞在する外国人が、保有する在留資格の許可の範囲外で収入を得る活動を希望する場合に行う手続きです。資格外活動許可には、「包括許可」と「個別許可」があります。
包括許可は、週28時間以内の収入を伴う活動が認められますが、風俗営業等に従事することはできません。また、成果報酬や請負などの業務で、時間の計測ができない就労活動を行うこともできません。個別許可は、個人事業主として活動する場合や業務委託契約、請負契約などを結んで稼働する場合に取得します。基本的に労働時間が明確でない場合に個別許可が必要と考えて問題ありません。
就労資格証明書交付申請
就労資格証明書交付申請とは、外国人が自ら保有する在留資格でどのような就労活動を行うことができるのかを法務大臣に証明してもらうための手続きです。この証明書を雇用主に提出することで、雇用主はその外国人をどのような業務に従事させることができるのか判断しやすくなり、外国人と雇用主の双方にとってメリットがあります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人を雇用する企業が、その外国人を配置転換して新たな業務に従事させたい場合や、転職を希望する外国人を雇用する場合などに、あらかじめ就労資格証明書を取得することで、許可範囲外の違法な活動に従事させてしまうリスクを軽減できます。
永住許可申請
永住許可申請とは、日本に滞在する外国人が「永住者」の在留資格への変更を希望する場合に行う手続きです。永住許可を受けた外国人は、在留活動や在留期間の制限を受けることなく、日本国内に滞在することが可能になります。
永住許可申請の原則的な法律上の要件としては、「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」「日本国の利益に合すると認められること」の3つがあります。ただし、永住許可申請を行う外国人が、日本人や永住者などの配偶者または子である場合は、素行善良要件と独立生計要件は適用されません。また、難民認定を受けている者などは独立生計要件が適用されません。
在留資格取得許可申請
在留資格取得許可申請とは、日本で出生した外国人の子や日本国籍を離脱した者が、その後60日以上日本に滞在する目的がある場合に行う手続きです。申請の時期は出生または国籍離脱の日から30日以内です。
入管法上の各種届出
入管法上の届出は、「住居地に関する届出」「所属機関等に関する届出」「所属機関の届出」の3つに分類されます。「住居地に関する届出」と「所属機関等に関する届出」は外国人本人が行い、「所属機関の届出」は所属機関の職員が行います。
住居地に関する届出
住居地に関する届出は、市町村役場等で手続きを行うことで、入管への届出義務も履行したものとみなされます。届出義務者は、住居地の変更などを行う外国人本人です。
届出義務者 | 届出の種類 |
日本に新規上陸した中長期在留者 | 新規上陸後の住居地の届出 |
住居地を変更した中長期在留者 | 転出・転入の届出 |
短期滞在等から新たに中長期在留者になった者 | 在留資格変更等に伴う住居地の届出 |
所属機関等に関する届出
所属機関等に関する届出は、一定の届出事由が生じた際に外国人本人が行う届出です。ただし、在留資格の種類により手続きが異なります。以下の3つに分類されます。
在留資格の種類 | 所属機関等に関する届出事項 |
教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号(ハ)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修 | 活動機関からの離脱、活動機関の移籍、活動機関の名称変更、活動機関の所在地変更、活動機関の消滅 |
高度専門職1号イまたはロ、高度専門職2号(イまたはロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能 | 契約機関との契約の終了、新たな契約機関との契約の締結、契約機関の名称変更、契約機関の所在地変更、契約機関の消滅 |
日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、家族滞在 | 配偶者との離婚、配偶者との死別 |
所属機関の届出など
所属機関の届出は、入管法第十九条の十七の規定に基づき、外国人が所属する企業や団体・個人などが行います。入管法およびその他関係法令に規定されている、所属機関等が行う主な届出は以下の通りです。
所属機関等の種類 | 届出の種類 |
就労系在留資格(芸術、宗教、報道、技能実習、特定技能を除く)、研修、留学の在留資格を有する中長期在留者が所属する機関 | 所属機関の届出(受け入れの開始・終了時) ※入管法第十九条の十七に基づく届出 |
技能実習の監理団体・実習実施者 | 技能実習法に基づく届出 |
特定技能の所属機関 | 特定技能所属機関による届出 ※入管法第十九条の十八に基づく届出 |
日本語教育機関(告示校・認定校) | 留学告示基準に基づく届出・日本語教育機関認定法に基づく届出 |
在留カードの手続き
在留カードに関する手続きは、以下の7種類です。在留カードは、中長期在留者が所持するカードであるため、短期滞在者や3カ月以下の在留期間が決定された者などには交付されません。
手続が必要な理由・時期 | 手続きの種類 |
氏名、生年月日、性別、国籍・地域に変更が生じた場合 | 住居地以外の在留カード記載事項の変更届出 |
16歳以上の永住者または高度専門職2号で在留カードの有効期間満了日まで2カ月以内である者、在留カードの有効期間の満了日が16歳の誕生日までとされている者 | 在留カードの有効期間の更新申請 |
紛失、盗難、滅失などより在留カードの所持を失った場合 | 紛失等による在留カードの再交付申請 |
在留カードが著しく毀損、汚損し、またはIC記録が毀損した場合 | 汚損等による在留カードの再交付申請 |
在留カードの著しい毀損、汚損、またはIC記録の毀損以外の理由で、在留カードの交換を希望する場合 | 交換希望による在留カードの再交付申請 |
在留カードの交付を伴う申請・届出を行う氏名に漢字を使用する場合 | 在留カード漢字氏名表記申出 |
中長期在留者でなくなった場合、在留カードの期限が切れた場合、単純出国をした場合、再入国許可の期間内に再入国しなかった場合、新たな在留カードの交付を受けた場合、死亡した場合 | 在留カード等の返納 |
在留資格外の活動・入管法違反について
日本国内に滞在する外国人は、許可を受けた在留資格の範囲外の就労活動に従事することは認められていません。以下に、主な入管法違反の規定や違反した場合の処分手続きについて解説します。
不法入国・不法残留(オーバーステイ)
不法入国とは、有効な旅券を所持せず、または上陸の許可を受けずに日本に入国することを指します。「不法上陸」という言葉もありますが、「入国」は領空や領海に侵入した時点で成立し、「上陸」は空港などの上陸審査場の外に出た時点で成立するという違いがあります。不法入国などで日本に入国し、そのまま滞在することを不法在留といいます。
一方、不法残留とは、一時は合法的に日本に入国し在留していた外国人が、在留期間満了後も日本国内に残留したり、在留資格の取消しや出国命令を受けた後も帰国せずに残留することを指します。特に在留期間の満了後に残留することをオーバーステイといいます。
不法在留と不法残留は、どちらも有効な在留資格を保有せず日本国内に滞在している状態であるため、不法滞在とも言われます。これらはいずれも退去強制処分事由に該当し、刑事罰の対象となることもあります。
不法就労・資格外活動
不法就労には、「不法滞在者が就労する場合」「就労できない在留資格を持つ者が就労する場合」「就労可能な在留資格を持つ者が許可の範囲外の就労活動をする場合」の3つの違法状態があります。不法滞在者は、就労の有無にかかわらず退去強制処分や刑事罰の対象となり得ます。
何らかの在留資格を持つ者が不法に就労することを「資格外活動」といいます。資格外活動には「専従資格外活動」と「非専従資格外活動」があります。専従資格外活動は、違法な資格外活動を「専ら行っていると明らかに認められる」場合に該当し、退去強制処分や刑事罰の対象となる可能性があります。
非専従資格外活動とは、専従資格外活動以外の資格外活動を指します。非専従資格外活動自体は退去強制事由には該当しません。しかし、非専従資格外活動罪には刑事罰の規定があり、仮に禁固以上の刑に処せられた場合は、退去強制事由に該当します。また、刑事処分を課されない場合でも、非専従資格外活動の事実が在留期間更新許可申請などの不許可事由になることがあります。
在留資格の取り消し
在留資格には取り消し制度があります。以下のいずれかに該当する場合、法務大臣はその外国人の在留資格を取り消すことができます。ただし、在留資格取消事由に該当する場合でも、実際に取り消しが行われるかどうかは法務大臣の裁量に委ねられています。
在留資格取消事由一覧
- 偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由に該当しないものとして、在留資格の許可を受けたこと
- ①に該当しない場合で、偽りその他不正の手段により、直近の在留資格の許可を受けていること
- 不実記載文書または図画の提出又は提示により、在留資格の許可を受けたこと
- 偽りその他不正の手段により、在留特別許可または仮滞在者の在留資格取得許可を受けたこと
- 在留資格ごとに規定された活動を行っておらず、かつ、他の活動を行いまたは行おうとして在留していること(地位等類型在留資格を除く)
- 在留資格ごとに規定された活動を継続して3カ月以上(高度専門職2号は6カ月以上)行わず在留していること(地位等類型在留資格を除く)
- 日本人の配偶者等(日本人の特別養子と日本人の子として出生した者を除く)または永住者の配偶者等(永住者の子として日本で出生し、引き続き日本に在留している者を除く)が配偶者としての活動を継続して6カ月以上行わず在留していること
- 在留資格の許可を受けた者が90日以内に、住居地の届出をしないこと
- 中長期在留者が、届出済みの住居地から退去した後90日以内に、新住居地の届出をしないこと
- 中長期在留者が、虚偽の住居地を届け出たこと
退去強制処分
退去強制処分とは、入管法に規定されている退去強制事由に該当する外国人を日本国外に退去させるための手続きです。退去強制処分は、原則として主任審査官の審査により、収容または監理措置のいずれかの方法で進められます。監理措置とは、監理人の監督の下、退去強制事由に該当する外国人が収容されずに社会内で生活しながら、退去強制手続を進める措置です。
また、退去強制事由に該当する外国人のうち、違反が不法残留のみであり、速やかに帰国することが確実であるなど一定の条件を満たす者については「出国命令制度」により収容されることなく出国することが可能な場合があります。
退去強制事由一覧
- 日本に不法入国した者
- 入国審査官から許可を受けずに日本に上陸した者
- 在留資格取消事由①または②の規定により在留資格を取り消された者
- 在留資格取消事由⑤の規定により在留資格を取り消された者(出国準備の期間指定を受けた場合の除く)
- 在留資格の取り消し後、出国準備期間指定を受けて、期間内に出国せず残留する者
- 他の外国人に不正に許可を受けさせる目的で、文書を偽変造し、または作成し、行使し、所持し、提供し、またはこれらの行為をそそのかし、もしくは助けた者
- テロ行為等の予備行為または実行を容易にする行為を行う恐れがあるとして法務大臣が認定する者
- 国際約束(条約、憲章、協定など)により日本への入国を防止すべきものとされている者
- 外国人に不法就労活動をさせる行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者
- 外国人に不法就労活動をさせるために自己の支配下に置く行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者
- 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為または⑩に規定する行為をあっせんし、そそのかし、またはこれを助けた者
- 在留カードまたは特別永住者証明書を偽変造または提供し、収受し、若しくは所持する行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者
- 行使の目的で、他人名義の在留カードまたは特別永住者証明書を提供し、収受し、若しくは所持し、または自己名義の在留カードを提供する行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者
- 偽変造された在留カードもしくは特別永住者証明書または他人名義の在留カードもしくは特別永住者証明書を行使し、そそのかし、またはこれを助けた者
- 在留カードまたは特別永住者証明書の偽変造の目的で、器械または原料を準備し、そそのかし、またはこれを助けた者
- 許可された在留資格の活動範囲外の就労活動を専ら行っていると明らかに認められる者
- 在留期間を経過して日本に残留する者
- 人身取引等を行い、そそのかし、またはこれを助けた者
- 旅券法に規定されている虚偽申請、行使、譲り渡し、貸与、譲り受け、借り受け、所持の罪で刑に処せられた者
- 集団密航者を上陸させ、輸送し、船舶等を準備し、収受し、蔵匿し、隠匿させ、その予備をした者
- 営利の目的で不法入国等の実行を容易にした者
- 不法入国等の実行を容易にする目的で偽造された旅券、乗員手帳、再入国許可書、または不法入国者について効力を有しない旅券、乗員手帳、再入国許可書を所持し、提供し、収受した者
- 不法入国等の目的で難民旅行証明書、渡航証明書、乗員手帳又は再入国許可書の交付を受けた者
- 不法入国等の目的で偽造された旅券、乗員手帳、再入国許可書、または自己について効力を有しない旅券、乗員手帳、再入国許可書を所持し、収受した者
- 退去強制を免れさせる目的で不法入国等に該当する外国人を蔵匿し、または隠避させた者
- 非専従資格外活動罪により禁固以上の刑に処せられた者
- 少年法に規定する少年で長期3年を超える懲役または禁錮に処せられたもの
- 麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律、または刑法のあへん煙に関する罪の規定に違反して有罪の判決を受けた者
- 無期または一年を超える懲役もしくは禁錮に処せられた者(刑の全部の執行猶予、刑の一部の執行猶予のうち執行が猶予されなかった部分が1年以下のものを除く)
- 売春またはその周旋、勧誘、場所の提供、その他売春に直接に関係がある業務に従事する者
- 他の外国人の不法入国または不法上陸をあおり、そそのかし、または助けた者
- 他の外国人が偽りその他不正の手段により、在留資格の許可を受けることをあおり、そそのかし、または助けた者
- 日本政府を暴力で破壊することを企て、主張し、またはこれを企てもしくは主張する政党その他の団体を結成し、もしくはこれに加入している者
- 公務員であるという理由により、公務員に暴行を加え、又は公務員を殺傷することを勧奨する政党その他の団体を結成し、加入し、または密接な関係を有する者
- 公共の施設を不法に損傷し、または破壊することを勧奨する政党その他の団体を結成し、加入し、または密接な関係を有する者
- 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持または運行を停廃し、または妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体を結成し、加入し、または密接な関係を有する者
- ㉝㉞㉟㊱に規定する政党その他の団体の目的を達するため、印刷物、映画その他の文書図画を作成し、頒布し、または展示した者
- 法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者
- 地位等類型在留資格以外の在留資格を持つ者で、刑法の住居を侵す罪、通貨偽造の罪、文書偽造の罪、有価証券偽造の罪、支払用カード電磁的記録に関する罪、印章偽造の罪、賭と博及び富くじに関する罪、殺人の罪、傷害の罪、逮捕及び監禁の罪、略取、誘拐及び人身売買の罪、窃盗及び強盗の罪、詐欺及び恐喝の罪、盗品等に関する罪により懲役または禁錮に処せられたもの
- 地位等類型在留資格以外の在留資格を持つ者で、第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条または第十六条の罪、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条もしくは第六条第一項の罪により懲役または禁錮に処せられたもの
- 短期滞在の在留資格で、国際競技会等の経過若しくは結果に関連して、フーリガン行為(殺傷、暴行、脅迫、建造物の損壊)をした者
- 中長期在留者で入管法上の届出義務違反、在留カードの更新・再交付申請義務違反、在留カードの受領・提示義務違反の罪により懲役に処せられた者
- 仮上陸の許可を受けた者で、住居及び行動範囲の制限などの条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じないもの
- 口頭審理または異議の申出に関する規定により退去を命ぜられた者で、遅滞なく本邦から退去しないもの
- 寄港地上陸、船舶観光上陸、通過上陸、乗員上陸、緊急上陸、遭難による上陸、一時庇ひ護のための上陸の許可を受けた者で、旅券または当該許可書に記載された期間を経過して日本に残留するもの
- 船舶観光上陸の許可を受けた者で、当該許可に係る指定旅客船が寄港する日本の出入国港において下船した後当該出入国港から当該指定旅客船が出港するまでの間に帰船することなく逃亡したもの
- 数次の船舶観光上陸の許可の取り消し後に出国期間の指定を受けた者で、当該期間内に出国しないもの
- 数次の乗員上陸の許可の取り消し後に出国期間の指定を受けた者で、当該期間内に帰船し又は出国しないもの
- 日本の国籍を離脱または日本で出生した者で、在留資格の取得許可または永住許可を受けずに60日を経過して日本に残留するもの
- 出国命令を受けた者で、出国期限を経過して日本に残留するもの
- 出国命令に付された条件(住居、行動範囲の制限など)に違反して出国命令を取り消された者
- 難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受け、在留特別許可、難民の認定または補完的保護対象者の認定を受けた外国人に対する定住者の許可を受けて在留する者で、難民の認定を取り消されたものまたは補完的保護対象者の認定を取り消されたもの
まとめ
この記事では、在留資格制度の基本的な概要について解説しました。在留資格は外国人にとって「命の次に大切なもの」と言われるほど重要です。また、外国人を雇用する企業の担当者にとっても、在留資格制度に関する理解は不法就労助長などの入管法違反リスクを回避する上で不可欠です。
初めて外国人を採用する場合は、あらかじめ在留資格について情報収集をしておくと、安心して採用活動に取り組むことができるのでおすすめです。