監修者:申請取次行政書士 安藤祐樹
介護分野で特定技能人材として働く外国人の数が年々増えています。
経営者の立場からは、どの水準の給与が適正なのか、また外国人本人にとっても自分の報酬が相場と比べてどうなのか、給与や賞与、待遇について気になる方も多いことでしょう。
この記事では、特定技能「介護」に従事する方の全国平均の給与や、賞与、報酬の仕組みについてわかりやすく解説します。さらに資格や企業規模による違い、収入アップの方法なども丁寧に説明し、実際の雇用や就労の現場で役立つ知識をまとめています。
特定技能「介護」の平均給与は月額約22万円

特定技能「介護」の在留資格で働く外国人の平均給与は月額約22万3千円とされています。
この金額は、令和5年における特定技能全体の平均である約23万2千円よりも1万円ほど低く、さらに全在留資格の外国人労働者の平均である約26万7千円と比べても約4万円の差があります。
また、日本人や永住者などを含めた介護職全体の平均月収約34万円と比較すると、実に12万円近く下回っています。
以下では、こうした収入格差の背景となる各種データや要因について、詳しく見ていきます。
平均年齢は26.3歳
特定技能「介護」分野で働く外国人の平均年齢は26.3歳であり、介護職全体の平均年齢である46.7歳と比べて大きな差があります。
この年齢差は、介護職としての経験年数にも表れており、特定技能で働く外国人の平均勤続年数は1.7年と、介護職全体の平均勤続年数である約7年に比べて短い傾向にあります。
そのため、こうした経験の差が、特定技能従事者と介護職全体との間に見られる平均月収の違いにも影響を与えていると考えられます。
賞与の平均額は約6万6千円
特定技能「介護」分野における賞与の平均額は約6万6千円であり、すべての在留資格の外国人労働者の平均賞与約20万7千円と比べて、明らかに低い水準となっています。
この差には、特定技能介護従事者の平均勤続年数が1.7年と短い点が影響していると考えられます。
統計には賞与をまだ受け取っていない就労初年度の外国人も含まれているため、全体の平均額が相対的に低く算出されている可能性があります。
資格の有無による給与の違い
介護業界では、保有資格によって給与に差が生じやすい特徴があります。
たとえば、初任者研修や実務者研修、介護福祉士国家資格を取得すると、それぞれ資格手当が支給されるケースが多いです。
一方で、特定技能「介護」で働く外国人は、在留資格取得に必要な試験には合格していても、これらの資格を保有していない場合が少なくありません。
その結果、介護職全体と比べて特定技能介護の給与が低くなる要因の一つとして、資格の有無が大きく影響していると考えられます。
企業規模による給与の違い
従業員数1,000人以上の企業に勤務する特定技能外国人の平均月額給与は約26万3千円で、特定技能全体の平均である約22万2千円を大きく上回っています。
こうしたデータからは、企業規模が大きいほど給与水準も高くなる傾向がうかがえます。
一方で、介護分野には従業員が1,000人を超えるような大規模事業者は多く存在しません。
そのため、製造業など大手企業の多い分野と比較すると、介護分野の給与水準は2万〜3万円程度低い傾向にあります。
特定技能の給与額決定のルール

特定技能制度を活用して外国人を雇用する場合、給与の決定には雇用主が守るべき法律上のルールが設けられています。
ここでは、特定技能の給与に関する決まりや基準について詳しく説明します。
日本人と同等以上の報酬でなければならない
特定技能の在留資格で外国人を雇用する際、企業は「同一業務に従事する日本人と同等以上の報酬」を支払うことが法律で義務付けられています。
この基準は現金で支給される賃金だけでなく、休暇の取得や社宅、食堂といった福利厚生の面でも日本人と同等以上である必要があります。
もっとも、勤続年数や保有資格、学歴、担当する業務の違いなど合理的な事情に基づいている場合には、日本人と給与に差があっても制度上の問題はありません。
最低賃金法が適用される
特定技能で働く外国人も日本の最低賃金法が適用され、必ず地域別に設定された最低賃金以上の給与が支払われます。
地域ごとの最低賃金は47都道府県ごとに異なり、都市部ほど賃金水準が高く、生活費の違いが反映されています。
2025年7月時点で最も高いのは東京都の1,163円、最も低いのは秋田県の951円です。
昨今の物価上昇など社会情勢の影響もあり、最低賃金は毎年見直しが行われ、年々上昇傾向にあります。
特定技能「介護」の収入を増やす主な方法

特定技能「介護」で働く方が収入を増やすためには、いくつかのポイントがあります。
ここからは、給与アップにつながる具体的な方法について順番にご紹介します。
介護の資格を取得する
介護現場で働く特定技能外国人が収入を上げる方法として、資格取得による手当の増加が挙げられます。
多くの介護事業所では、資格ごとに月額の手当を設けており、たとえば「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」「介護福祉士国家試験」などで資格手当が加算される傾向があります。
平均的な資格手当の相場は以下の通りです。
・介護職員初任者研修:約3千円
・介護福祉士実務者研修:約5千円
・介護福祉士国家試験:約1万円
このような資格手当は、特定技能で働く外国人にも平等に適用されるのが原則です。
特定技能制度では、外国人であることを理由とする報酬格差が禁止されているため、資格取得の努力がそのまま給与面に反映されます。
そのため、必要な知識やスキルを身につけて資格取得を目指すことは、長期的なキャリアアップや収入向上につながります。
日本能力を向上させる
介護分野では、日本語でのコミュニケーション能力が現場での信頼構築や業務の正確さに直結するため、日本語力を重視する職場が数多く見られます。
そのため、日本語能力試験(JLPT)などの高いレベルに合格している外国人労働者は、より待遇の良い職場に転職しやすくなる傾向があります。
加えて、日本語力の向上によって、介護福祉士国家試験の受験勉強や日々の業務にも余裕が生まれ、キャリアアップへの道が広がります。
また、施設によっては日本語能力に応じた手当が支給される場合もあり、語学力を磨くことが直接的な収入増加につながることもあります。
日本語の理解力を高めることで、将来的なキャリア形成や安定した雇用環境の確保にもつながると考えられます。
まとめ
この記事では、特定技能「介護」の給与相場や年齢、企業規模による違い、そして賃金決定に関係する法律のルールについて詳しく解説しました。
制度上、外国人介護士も日本人と同様の待遇が保証されており、資格取得や日本語能力の向上によって収入を増やすことが期待できます。
今後、特定技能での就労を検討している方は、目先の給与や待遇だけでなく、資格や語学力を伸ばすことの重要性も意識しながらキャリア設計を進めていくことが大切です。
監修者コメント
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」によると、特定技能外国人の平均月収は17万4千円と、現在の平均月収と比べて5万円以上低い水準であったことが確認できます。
近年は、日本も物価高で生活コストが上昇していますが、給与水準もこのまま上がっていけば、特定技能で働く外国人にとっても、より安定した生活設計が可能になると考えられます。