監修者:申請取次行政書士 安藤祐樹
介護分野で特定技能人材として働く外国人の数が年々増えています。
経営者の立場からは、どの水準の給与が適正なのか、また外国人本人にとっても自分の報酬が相場と比べてどうなのか、給与や賞与、待遇について気になる方も多いことでしょう。
この記事では、特定技能「介護」に従事する方の全国平均の給与や、賞与、報酬の仕組みについてわかりやすく解説します。さらに資格や企業規模による違い、収入アップの方法なども丁寧に説明し、実際の雇用や就労の現場で役立つ知識をまとめています。
特定技能「介護」の受け入れの全体(試験・協議会・訪問介護など)は、特定技能「介護分野」受け入れの条件と流れで解説しています。
特定技能「介護」の平均給与の目安は月額約22万5千円

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、「医療,福祉」の産業で働く特定技能の外国人の所定内給与額の平均は225,000円でした。残業代などを含む「きまって支給する現金給与額」では236,900円です。
この統計には「介護」だけの区分がないため、介護の仕事が多い「医療,福祉」の数字を目安として紹介しています。所定内給与額は、令和7年6月分の給与から残業代などを除いた、税金などを差し引く前の額です(一般労働者の平均。短時間労働者は含みません)。
特定技能全体の平均は221,400円、在留資格を問わない外国人労働者全体の平均は254,300円です。
一方、日本人を含む「介護職員(医療・福祉施設等)」の所定内給与額の平均は262,900円で、37,900円の差があります(産業別と職種別で集計の区分が違うため、目安としての比較です)。
以下では、こうした収入格差の背景となる各種データや要因について、詳しく見ていきます。

平均年齢は27.0歳
同じ統計で、「医療,福祉」で働く特定技能の外国人の平均年齢は27.0歳で、日本人を含む「介護職員(医療・福祉施設等)」の平均45.3歳と比べて大きな差があります。
この年齢差は勤続年数にも表れており、「医療,福祉」で働く特定技能の外国人の平均勤続年数は1.6年と、介護職員の平均9.0年に比べて短くなっています。
そのため、こうした経験の差が、特定技能従事者と介護職全体との間に見られる平均月収の違いにも影響を与えていると考えられます。
賞与の平均額は年間約20万5千円
「医療,福祉」で働く特定技能の外国人の「年間賞与その他特別給与額」の平均は205,200円で、外国人労働者全体の平均243,300円や、介護職員(医療・福祉施設等)の平均547,800円と比べて低い水準です。
この統計の賞与は、調査の前の年(令和6年1月〜12月)の1年間に支払われた額です。平均勤続年数が1.6年と短く、前の年の賞与をまだ受け取っていない人も統計に含まれるため、平均額が低く出ている可能性があります。
資格の有無による給与の違い
介護業界では、保有資格によって給与に差が生じやすい特徴があります。
たとえば、初任者研修や実務者研修を修了したり、国家資格の介護福祉士を取得したりすると、資格手当が支給されることがあります。
一方で、特定技能「介護」で働く外国人は、在留資格取得に必要な試験には合格していても、これらの資格をまだ持っていない人もいます。
そのため、介護職全体と比べて特定技能の給与が低くなる要因の一つとして、資格の有無も影響していると考えられます。
企業規模による給与の違い
令和7年の統計で、特定技能の外国人の所定内給与額を企業規模別にみると、従業員1,000人以上の企業は213,200円、100〜999人は217,500円、10〜99人は227,600円でした。
特定技能では、企業規模が大きいほど給与が高いという傾向は、この統計からは見られません。
また、特定技能の外国人の所定内給与額を産業別にみると、「医療,福祉」は225,000円で、製造業(207,300円)より高く、建設業(265,900円)より低くなっています。
実際の給与は事業所ごとに違うため、求人や雇用条件書で個別に確かめることが大切です。
特定技能の給与額決定のルール

特定技能制度を活用して外国人を雇用する場合、給与の決定には雇用主が守るべき法律上のルールが設けられています。
ここでは、特定技能の給与に関する決まりや基準について詳しく説明します。
日本人と同等以上の報酬でなければならない
特定技能の在留資格で外国人を雇用する際、企業は、同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払うことが法令(特定技能基準省令)で求められています。
また、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設(社員住宅など)の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしてはならないとされています(出入国在留管理庁の運用要領)。
報酬が同等以上かどうかは、同程度の技能等を持ち、任される職務内容や責任の程度が同等の日本人労働者と比べて説明します。比べる日本人労働者がいない場合は、賃金規程や、職務内容・責任の程度が最も近い日本人労働者との比較で説明することになります(運用要領)。
最低賃金法が適用される
特定技能で働く外国人にも日本の最低賃金法が適用され、雇用主は地域別最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。
地域別最低賃金(時間額)は、47都道府県ごとに決められています。
令和8年度の改定では、最も高いのは東京都の1,280円(令和8年10月1日発効)、最も低いのは宮崎県の1,085円(令和8年10月24日発効)で、全国加重平均は1,177円です。
発効日は都道府県ごとに違い、発効日より前は改定前の額(宮崎県は1,023円)が適用されます。最低賃金は毎年見直されており、令和8年度は全都道府県で引き上げられました。
特定技能「介護」の収入を増やす主な方法

特定技能「介護」で働く方が収入を増やすためには、いくつかのポイントがあります。
ここからは、給与アップにつながる具体的な方法について順番にご紹介します。
介護の資格を取得する
介護現場で働く特定技能外国人が収入を上げる方法として、資格取得による手当の増加が挙げられます。
介護事業所によっては資格手当を設けており、「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」の修了や、国家資格の「介護福祉士」で手当が加算されることがあります。
資格手当の有無や金額は、事業所によって異なります。働いている、または応募する事業所の賃金規程や雇用条件書で確かめましょう。
資格手当がある事業所では、特定技能で働く外国人にも日本人と同じ基準で適用されることが求められます。
特定技能制度では、外国人であることを理由として報酬の決定などで差別的な取扱いをすることが禁止されているため、資格を取ることは給与を上げる手段の一つになります。
そのため、必要な知識やスキルを身につけて資格取得を目指すことは、長期的なキャリアアップや収入向上につながります。
日本語能力を向上させる
介護分野では、日本語でのコミュニケーション能力が現場での信頼構築や業務の正確さに直結するため、日本語力を重視する職場が数多く見られます。
そのため、日本語能力試験(JLPT)などの高いレベルに合格している外国人労働者は、より待遇の良い職場に転職しやすくなる傾向があります。
加えて、日本語力の向上によって、介護福祉士国家試験の受験勉強や日々の業務にも余裕が生まれ、キャリアアップへの道が広がります。
また、施設によっては日本語能力に応じた手当が支給される場合もあり、語学力を磨くことが直接的な収入増加につながることもあります。
日本語の理解力を高めることで、将来的なキャリア形成や安定した雇用環境の確保にもつながると考えられます。
まとめ
この記事では、特定技能「介護」の給与相場や年齢、企業規模による違い、そして賃金決定に関係する法律のルールについて詳しく解説しました。
制度上、特定技能の外国人には日本人と同等以上の報酬が求められており、資格取得や日本語能力の向上によって収入を増やすことが期待できます。
今後、特定技能での就労を検討している方は、目先の給与や待遇だけでなく、資格や語学力を伸ばすことの重要性も意識しながらキャリア設計を進めていくことが大切です。
監修者コメント
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」によると、特定技能外国人の賃金(所定内給与額)の平均は174,600円で、令和7年の221,400円と比べて46,800円低い水準であったことが確認できます。
近年は、日本も物価高で生活コストが上昇していますが、給与水準もこのまま上がっていけば、特定技能で働く外国人にとっても、より安定した生活設計が可能になると考えられます。
記事作成で参照した一次情報
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 在留資格区分別にみた賃金」
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査」(令和7年 外国人労働者 第1表、職種 第5表)
- 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 在留資格区分別にみた賃金」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領(本体)」
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(e-Gov)

