【技人国ビザ】技術・人文知識・国際業務とは?取得の要件や該当する職種・従事可能な業務内容について解説します

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執筆者:申請取次行政書士 安藤祐樹

技術・人文知識・国際業務の在留資格で日本に滞在する外国人は、令和5年末時点で362,346人です。これは数ある在留資格の中でも、永住者、技能実習に次いで3番目に多い在留数です。この在留資格は、外国人が日本で就労する上で最も一般的であり非常に人気がありますが、その一方で、企業の採用担当者にとっては、従事させる業務範囲の判断が最も難しい在留資格と言えます。

この記事では、技術・人文知識・国際業務の在留資格の取得要件や従事可能な職種と業務内容、他の在留資格との関係について詳しく解説します。

目次

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは

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技術・人文知識・国際業務(通称、技人国・ギジンコク)とは、日本国内の企業などとの契約に基づいて、主に事務職や営業職、開発職などに従事する外国人が取得する在留資格です。ただし、この在留資格で従事可能な業務は職種と直接紐づくわけではないため、事務職であっても従事できない業務があり、現場作業的な職種であっても従事可能な場合があります。

入管法が規定する技術・人文知識・国際業務の在留資格で認められる活動内容は以下の通りです。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)

引用元:出入国管理及び難民認定法

これをわかりやすく言うと、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人は、「理系・文系の学術上の素養が必要な業務」または「一般的な日本人にはない、外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務」に従事することができると解釈できます。

出入国在留管理庁の内部規則である入国・在留審査要領によると、「理系・文系の学術的な素養」とは、大学等において理系または文系の科目を専攻して修得した専門知識であって、単に経験を積んで得た知識だけではなく、学問的・体系的な知識を必要とするものと説明されています。

また「外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務」とは、外国の社会・歴史・伝統の中で培われた発想や感覚をもとにした専門的能力を必要とする業務であると解されています。

技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには、従事する業務の内容が必ず上述の活動範囲に当てはまっていること(在留資格該当性)が求められます。

技人国の許可要件

技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには、新規入国、在留資格の変更、更新いずれの場合であっても以下の基準(上陸許可基準)を満たす必要があります。

理系・文系の学術的な素養を必要とする業務に従事する場合

理系・文系の学術的な素養を必要とする業務に従事する場合は、以下①から④のいずれか1つの要件を満たし、かつ報酬額の基準にも適合する必要があります。

  • 業務に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと。
  • 業務に関連する科目を専攻して日本国内の専修学校の専門課程を修了したこと。
  • 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程で業務に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
  • 法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する資格等を有していること。(法務省|IT告示

②の「専修学校の専門課程を修了したこと」とは、文部科学大臣が認定する「専門士」または「高度専門士」の学位が取得可能な課程を修了していることを意味します。また、②の学歴要件を満たして技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには、「日本国内」の専修学校の専門課程を修了することが必要です。

報酬額の基準については、以下の通りです。

  • 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務に従事する場合

外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務に従事する場合は、以下のいずれにも該当している必要があります。

  • 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
  • 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
  • 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

②の3年の実務経験は、業務そのものの経験ではなく、関連する業務の実務経験があれば要件を満たすとされています。

理系・文系学問の素養と外国人特有の思考・感受性の両方必要な業務の場合

「理系・文系の学術的な素養を必要とする業務」は、学歴要件を満たせば実務経験がなくても許可を取得できます。一方、「外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務」は、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾や室内装飾に係るデザイン、商品開発などに限定され、原則として3年以上の実務経験が必要です。

このように技術・人文知識・国際業務の許可要件は複数ありますが、仮に「理系・文系の学術的な素養を必要とする業務」と「外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務」の両方に当てはまる場合、学歴などの要件を満たしていれば「理系・文系の学術的な素養を必要とする業務」の要件が適用され、実務経験がなくとも在留が許可されます。

他の在留資格と共通の許可要件

在留資格の審査の際には、申請の種類により異なる要件がいくつか存在します。以下の要件は、技術・人文知識・国際業務の審査特有の要件ではなく、すべての在留資格に共通する要件ですが、重要ですので押さえておいてください。

在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請の際には、過去の在留状況が確認されます。「現に有する在留資格の活動をしっかりと行っていたこと」「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」「雇用・労働条件が適正であること」「納税義務を履行していること」「入管法に定める届出等の義務を履行していること」など、複数の審査項目が存在します。

在留資格認定証明書交付申請は、原則として外国人が日本に入国する前に行う手続きであるため、過去の在留状況の審査は基本的にありません。ただし、外国人が日本に新規上陸する際の条件として「活動が虚偽ではないこと」を立証する必要があるため、審査官に疑われる可能性のある部分については、事前に立証資料を補強しておくことをおすすめします。

技人国の在留期間

技術・人文知識・国際業務の在留資格で一度に許可される在留期間は、5年、3年、1年、3カ月のいずれかです。在留期間の長さは、「所属機関のカテゴリー」「申請人の在留状況や活動実績」「所属機関の活動実績」などにより決定されます。所属機関のカテゴリーについての詳細は以下の記事をご確認ください。

なお、技術・人文知識・国際業務の在留資格には、在留期間の更新回数制限がないため、「3年または5年の在留期間を決定されていること」「引き続き10年以上日本に滞在していること」「就労系の在留資格(特定技能1号と技能実習を除く)で5年以上日本に滞在していること」など、永住許可の要件を満たせば、最終的には技術・人文知識・国際業務から永住者の在留資格に変更することが可能です。

技人国で従事可能な職種と業務内容

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技術・人文知識・国際業務の在留資格で従事可能な職種や業務の範囲は、個々の業務内容や外国人本人の学歴や実務経験などにより判断されるため、明確な線引きはできません。ただし、「法務省のガイドライン」などから、ある程度許可の範囲を具体化することが可能です。

参照:出入国在留管理庁|「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
(URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html

IT系職種

IT系職種の場合、基本的にオフィス内で開発業務などに従事することが多いため、技術・人文知識・国際業務との相性は非常に良いです。また、この分野は日本人であっても理系・文系問わずさまざまな科目を専攻した人が従事する業務であるため、大卒者の場合は、専攻科目と業務の関連性を柔軟に判断してもらいやすい分野と言えます。出入国在留管理庁は許可事例として以下のような業務を公表しています。

  • ゲームメーカーのオンラインゲーム開発者
  • ソフトウェア会社のソフトウェアエンジニア
  • 電気通信設備工事会社のコンピュータープログラマー
  • 金融機関のシステム開発者
  • 航空機整備会社のシステム解析、開発者
  • IT関連企業のコンサルタント業務
  • 電気通信会社のセキュリティ関連業務
  • ITコンサルタント企業のカスタマーサポート業務

語学系職種

語学系の職種は、技術・人文知識・国際業務との相性が良いです。この分野の業務は、外国語の知識・技能を有することが前提となっているため、外国人留学生が就職する際にも日本人と競合しにくい領域です。また、通訳・翻訳業務の場合、実務経験の要件が緩和されているため、許可を取得しやすい分野と言えます。語学系職種の許可事例としては、以下の職種が公表されています。

  • 語学学校の語学講師
  • 食料品・雑貨等輸入・販売会社の通訳・翻訳業務
  • コンピュータ関連会社の通訳・翻訳業務
  • 語学指導を業務とする企業の英会話講師
  • 技能実習監理団体の通訳・日本語講師

マーケティング系職種

近年、海外企業との取引が活発化する中、技術・人文知識・国際業務の在留資格でマーケティングや営業系の職種に従事する外国人が増加しています。この分野の職種で許可を取るためには、高い語学力と従事する業務に関する専門知識や大学等で専攻した科目との関連性が求められます。マーケティング系職種の許可事例は以下の通りです。

  • 自動車メーカーのマーケティング支援業務
  • 総合食料品店の営業・海外業務
  • 食品会社のコンサルティング業務
  • 化粧品販売会社のビューティーアドバイザー業務

技術開発系職種

自動車メーカーや電機系メーカーなどの製造企業で技術開発系の業務に従事する場合も、技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得することができます。この分野で許可を取得するためには、従事する業務に関する専門知識・技術を有していることや、大学などで専攻した科目と業務の関連性が求められます。また、この分野の業務は工場が勤務地となることが多いため、ライン作業など技術・人文知識・国際業務に該当しない業務には従事しないことを証明する資料の提出が求められる場合があります。

  • 自動車メーカーの技術開発マネージャー
  • 電気製品開発企業の技術開発業務

事務系職種

人事、経理、法務など事務系の職種は、技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する業務が多いです。ただし、一般的な企業においては、基本的に日本人が事務担当として配属されるため、この分野で働く外国人は、語学能力が必要な作業や他の外国人の管理業務などの役割を担うこと多いです。事務系職種の許可事例は以下の通りです。

  • コンピュータ関連会社の貿易、会計業務
  • 法律事務所の弁護士補助業務
  • 人材会社の外国人スタッフ教育・管理等のマネジメント業務
  • 飲食店経営会社の人事担当業務

その他の職種

その他にも、さまざまな職種・業務内容で技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得することが可能です。以下に、出入国在留管理庁が公表している許可事例の一部を紹介します。

  • 海運会社の運航、教育指導業務
  • 航空会社の旅客業務、交渉業務
  • 航空会社の客室乗務員、社員研修の指導
  • 建設会社の研究、調査業務
  • 建設会社の建築積算業務
  • 電気通信設備工事会社の工事施工図作成業務、現場職人の指揮・監督業務
  • 土木・建設コンサルタント会社の研究、解析、構造設計業務
  • リゾートホテルの翻訳・通訳業務、予約管理、コンシェルジュ業務

技人国で従事できない業務

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技術・人文知識・国際業務の在留資格では、一部の例外を除き、「理系・文系の学術的な素養を必要とする業務」や「外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務」以外の業務に従事することは認められません。例えば、特定技能や技能実習の在留資格に該当する業務は、技術・人文知識・国際業務の在留資格で従事することができない業務の典型例です。以下に、技術・人文知識・国際業務の在留資格審査において、不許可となった事例を紹介します。

技人国に該当しない業務として不許可となった事例

以下は、技術・人文知識・国際業務の在留資格で従事可能な活動に該当しないとして、不許可となった事例です。

  • 弁当加工工場の弁当箱詰め作業
  • 飲食店店舗の接客・調理業務
  • バイク修理・改造・輸出入企業のフレーム修理・タイヤ交換業務
  • 中古電子製品販売会社のパソコンデータ保存・ハードウェア部品交換業務
  • ビルメンテナンス会社の清掃業務
  • ホテルのレストランでの配膳業務、客室清掃業務
  • ホテルの荷物運搬・駐車誘導業務
  • 小売店の接客販売業務
  • 菓子工場の洋菓子製造業務

専攻科目との関連性がないとして不許可となった事例

大卒者の場合、専門科目との関連性は比較的柔軟に判断されます。以下に、専門学校を修了した者の在留資格審査における不許可事例を紹介します。

  • 声優学科を卒業した者がホテルのロビースタッフとして従事する活動
  • イラストレーション学科を卒業した者が翻訳・通訳を伴う衣類販売業務に従事する活動
  • ジュエリーデザイン科を卒業した者がコンピュータ関連サービスの通訳・翻訳業務に従事する活動
  • 国際ビジネス学科で英語、貿易等を履修し卒業した者が、不動産販売営業業務に従事する活動
  • 国際ビジネス学科で経営、貿易等を履修し卒業した者が、運送会社で翻訳・通訳・労務管理業務に従事する活動
  • 国際コミュニケーション学科で接遇、観光サービス論などを履修し卒業した者が、飲食店運営会社で販売促進、店舗開発、商品開発、フランチャイズ開発等の業務に従事する活動
  • 接遇学科でホテル、宿泊、飲料衛生学、日本文化等を履修し卒業した者が、エンジニア派遣会社で外国人従業員の管理・監督、マニュアル指導・教育、労務管理業務に従事する活動

例外的に技人国に該当しない業務を行える場合

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技術・人文知識・国際業務の在留資格で認められる活動は、原則として「理系・文系の学術的な素養を必要とする業務」と「外国人特有の思考方法や感受性を必要とする業務」のみです。しかし、例外的に技術・人文知識・国際業務の活動に該当しない場合でも、在留資格の変更等をすることなく認められるケースがありますので、以下に紹介します。

例外1.緊急時の対応

緊急時の対応として、一時的に技術・人文知識・国際業務の在留資格で認められた活動以外の業務に従事できる場合があります。ただし、在留資格に該当しない活動が主たる業務と判断された場合は、在留資格の取り消しや更新不許可などの要因になり得るため、必ず緊急時の一時的な業務として行い、完了後は従来の業務に戻ることが重要です。

例1)ホテルのフロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり、急遽、宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合

例2)台風が来る前に被害を軽減させるための対策として、屋外設置物を室内に移動させるための運搬作業をすることになった場合

例外2.実務研修期間に行う活動

技術・人文知識・国際業務の在留資格で管理業務やマーケティング業務などを行う場合、新規採用後に一定期間、実務研修としてライン作業や接客などの現場作業に従事することが認められることがあります。この場合、研修で行う業務の内容について、あらかじめ在留資格申請の際に実務研修計画書などを提出し、入社後のキャリアステップや各段階における具体的な職務内容などを説明する必要があります。

なお、実務研修期間がある場合は、原則として1年の在留期間しか許可されませんが、長期の在留期間を得るために実務研修の事実を隠さないよう注意してください。事前に許可を得ることなく在留資格外の活動を行っていると判断された場合、不法就労に該当する可能性があり、外国人本人と雇用主双方が処罰されることがあります。

例外3.資格外活動許可を得て行う活動

技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人は、資格外活動許可を取得することで、週28時間に限り、在留資格「教育」または「技能」に該当する就労活動を行うことができます。ただし、資格外活動は、地方公共団体等との雇用に基づいて従事する活動のみ許可されます。また、「技能」の活動については、スポーツの指導に関する業務以外に従事することはできません。

なお、資格外活動許可には、個々の活動内容ごとに審査を行う「個別許可」の制度も存在します。個別許可を取得した場合は、上述の許可範囲外の活動にも従事できる可能性があります。

例外4.昇進で取締役等になった場合

技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人が昇進により、本来「経営・管理」の在留資格が必要な取締役等になった場合、昇進時点から在留期間満了までの間は、技術・人文知識・国際業務の在留資格で「経営・管理」に該当する活動を行うことができます。その場合、在留期間満了までに在留資格変更許可申請を行い、「経営・管理」の在留資格を取得する必要があります。

他の在留資格との関係

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技術・人文知識・国際業務の在留資格は、活動範囲が非常に広く、他の在留資格と業務の内容が重なることがあります。その際、どの在留資格を優先して許可されるのか、主な在留資格との関係について以下に解説します。

在留資格「経営・管理」との関係

企業の経営活動や管理活動は、経営学、商学、法学の知識やその他の専門的な学術的素養を要する業務であるため、技術・人文知識・国際業務の活動と一部重複します。このように、経営・管理と技術・人文知識・国際業務のどちらにも該当する場合は、原則として「経営・管理」の在留資格が優先されます。

在留資格「医療」との関係

在留資格「医療」は、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士の資格を保有する外国人が、法律上資格を有する者が行う医療業務に従事する場合に該当します。医療に関係する業務のうち、これらの資格を有していなくても行うことができる活動は、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。

在留資格「法律・会計業務」との関係

在留資格「法律・会計業務」は、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、外国法事務弁護士、公認会計士、外国公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士の資格を保有する外国人が、法律上資格を有する者が行う法律または会計に関する業務に従事する場合に該当します。

これらの資格を持つ者であっても、資格が不要な活動に従事する場合は、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。また、補助者や事務員として法律または会計に関する業務に従事する場合も同様に、「法律・会計業務」ではなく、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。

在留資格「教育」との関係

在留資格「教育」は、日本国内の小学校、中学校、高等学校などの教育機関において語学教育その他の教育活動を行うための在留資格です。語学指導に関する業務に従事する場合でも、一般企業や英会話学校などで活動する場合は、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性が高いです。

在留資格「企業内転勤」との関係

在留資格「企業内転勤」の業務内容は、技術・人文知識・国際業務と同じです。ただし、「企業内転勤」は期間を定めて転勤する点や転勤先の特定の事業所でしか活動できない点で技術・人文知識・国際業務と異なります。

また、「企業内転勤」の許可を取得するためには、「転勤直前に外国にある本店・支店等で1年以上技術・人文知識・国際業務に該当する業務に従事していること」という要件があります。この要件を満たせない場合は、「企業内転勤」の在留資格を取得することはできません。ただし、「企業内転勤」の在留資格を取得できなくても、技術・人文知識・国際業務の許可要件を満たせば、予定していた業務に従事することが可能です。

在留資格「介護」との関係

在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を持つ外国人が、日本国内の病院や介護施設などで介護業務を行う場合に取得する在留資格です。その他、ケアマネージャーとしての業務に従事する場合もこの在留資格を取得することができます。

介護施設等で働く場合であっても、事務職や営業職など介護業務以外の業務に従事する場合は、技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する場合があります。なお、技術・人文知識・国際業務の在留資格で介護施設等で就労する場合、たとえ介護福祉士の資格を保有していても介護業務に従事することはできません。

技人国の外国人を雇用する際の注意点

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技術・人文知識・国際業務の在留資格は、許可される活動の範囲が広く、さまざまな分野の業務に従事することができます。しかし、許可の内容は、個々の申請人(外国人本人)の経歴や従事する業務の内容、企業等との契約内容などを個別に審査して付与されるものです。そのため、転職や配置転換などで契約相手や業務の内容が変更となった場合は、新たに従事する業務が許可の範囲内の活動であることを事前にしっかりと確認する必要があります。

転職者を雇用する場合

技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人の転職者を受け入れる場合、その外国人が大学等で履修した専攻科目と従事予定の業務内容の関連性を確認する必要があります。業務内容が技術・人文知識・国際業務の活動内容に該当していれば、その外国人転職者を受け入れること自体に違法性はありません。しかし、専攻科目と業務の関連性がない場合、上陸許可基準に適合しないと判断され、その後の在留期間更新が許可されないリスクがあります。雇用主と外国人双方のためにも、更新許可申請を見据えてしっかりと判断する必要があります。

その他、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人が転職した場合には、届出義務が生じるため、確実に履行する必要があります。外国人本人には「所属機関に関する届出」の義務が課されます。この届出は入管に対して行いますが、怠ると罰金刑の規定があります。また、外国人を雇用した企業側には、ハローワークで行う「外国人雇用状況の届出」の義務が課されます。この届出を怠った場合も罰金刑の規定がありますので注意してください。なお、雇用保険被保険者となる外国人の場合は、ハローワークで雇用保険被保険者資格取得届を行えば「外国人雇用状況の届出」も実施したものとみなされます。

参考:厚生労働省|外国人雇用状況の届出について
(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html

配置転換や新たな業務の割り当て

技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人を雇用しており、その外国人の配置転換をしたり、新たな業務を担当させる場合も事前に適法性の判断が必要です。その際、新たな業務の内容が技術・人文知識・国際業務の活動内容に該当していれば、業務に従事させること自体に違法性は生じません。ただし、外国人従業員が大学等で履修した専攻科目と業務の内容に関連性がない場合、上陸許可基準に適合しないと判断され、その後の在留期間更新が許可されないリスクがあります。新しい業務を任せる際は、入管法の基準を前提とした計画を立てることが重要です。

困ったら就労資格証明書を取得する

外国人転職者の受け入れや配置転換などで、新たに従事させる予定の業務が技術・人文知識・国際業務の在留資格の活動に該当するか不明な場合は、就労資格証明書交付申請を行うことで、在留資格該当性の有無を事前に確認することが可能です。

申請書の提出先は、外国人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署(本局、支局、出張所)です。審査期間は1~3カ月です。なお、就労資格証明書の交付処分を受けても、在留期間満了時に更新許可が取得できる保証はないため注意が必要です。

技人国の在留許可を取得する方法

技人国のおもな採用方法の画像

技術・人文知識・国際業務の在留資格で就労許可を取得する方法は、大きく分けて3種類あります。申請先はすべて申請人(代理人)の住居地(所在地)を管轄する出入国在留管理官署(本局、支局、出張所)ですが、採用ルートにより実施すべき申請手続の種類は異なります。

海外で採用して日本に呼び寄せる

日本国外から外国人を呼び寄せて採用する場合、企業と外国人との間で雇用契約等を締結した後に、企業側の職員が代理人となって「在留資格認定証明書交付申請」を行います。無事に在留資格認定証明書が交付されたら、今度は外国人本人が居住国の日本大使館等に査証(ビザ)発給申請を行います。査証が発給されたら航空券を手配し、日本国内の空港に到着後、外国人本人が入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸許可を受けて技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得します。

外国人が日本に入国する流れの画像

日本国内で転職者を採用する

日本国内で転職者を採用する場合、雇用契約締結時点でその外国人が保有している在留資格の種類により行うべき手続きは異なります。既に技術・人文知識・国際業務の在留資格で日本に滞在している外国人を採用し、雇用開始後も技術・人文知識・国際業務の在留資格の活動に該当する業務に従事してもらう場合、入管に対して在留資格変更等の申請手続をする必要はありません。

雇用契約締結時点で、その外国人が技術・人文知識・国際業務以外の在留資格で日本に滞在している場合、入社後に技術・人文知識・国際業務に該当する活動に従事してもらうためには、入管に対して「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。その際、申請の主体となるのは外国人本人で、原則として企業側に代理申請する権限はありません。ただし、申請書には所属機関作成用の書類が含まれるため、外国人本人と企業の双方で協力して在留資格を変更する必要があります。在留資格変更許可申請の申請時期は、「変更事由が生じたとき」から「保有している在留資格の期限満了まで」の間です。

留学生を新卒採用する

留学生を採用する場合、在留資格「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に変更するために在留資格変更許可申請を行う必要があります。在留資格変更許可申請の申請人は外国人本人であり、原則として企業側に代理申請する権限はありません。ただし、申請書には所属機関作成用の書類が含まれるため、外国人本人と企業の双方で協力して在留資格を変更する必要があります。

なお、留学生を新卒採用する際は、入社予定日から逆算して申請時期のスケジュールをしっかりと立てて手続きを行うことが必要です。在留資格変更許可申請の審査期間は1~3カ月ですが、仮に審査中に留学の在留期間が満了し、入社予定日を過ぎてしまった場合、特例期間に入るため在留自体は適法に継続できますが、特例期間中に変更後の在留資格に基づいた就労活動を行うことはできません。

まとめ

この記事では、技術・人文知識・国際業務の在留資格で従事できる職種や業務内容、手続きの方法、採用時の注意点などについて解説しました。

技術・人文知識・国際業務の活動範囲は、他の在留資格と重複している部分も多く、非常に難解です。入管法には刑事罰の規定だけでなく、「申請不許可」「在留資格取り消し」「退去強制」など複数の行政手続き上の不利益処分の規定があるため、在留資格の活動範囲について誤った解釈をしてしまうと、突然想定外の事態に直面することがあります。

安心して外国人従業員を雇用するためには、外国人雇用に関する知識の蓄積が不可欠です。この記事が、外国人と受け入れ企業双方にとって少しでもお役に立つことを願っています。

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執筆者

安藤祐樹のアバター 安藤祐樹 申請取次行政書士

きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。TOEIC850点。趣味はプログラミングと料理。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

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