特定技能「介護」の受け入れ人数枠と常勤職員数の算定方法

特定技能「介護」の受け入れ人数枠と常勤職員数の算定方法
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監修者:申請取次行政書士 安藤祐樹

介護業界では人手不足が深刻化するなか、特定技能「介護」制度を活用して外国人材を受け入れる施設が増えています。
しかし、いざ雇用を進める段階になると、受け入れ可能な人数枠や「常勤職員数」の算定方法など、さまざまな疑問が生じることがあります。

本記事では、介護分野における特定技能外国人の受け入れ人数枠と、その算定に必要な「常勤職員数」の定義について、わかりやすく解説します。
受け入れルールや計算方法を正しく理解することで、制度を適切に活用し、安心して外国人材を受け入れるためのポイントを押さえましょう。

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特定技能の介護分野には受け入れ人数枠がある

特定技能の介護分野には受け入れ人数枠がある

介護分野における特定技能外国人の雇用では、受け入れ人数に一定の基準が設けられており、「事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を超えてはならない」と定められています。

この章では、この人数枠の詳細や算定の考え方について解説します。

人数のカウントは事業所ごとに行う

人数の算定は法人全体でまとめて行うのではなく、事業所ごとに区切って行われるのが原則です。
この事業所という単位は、介護保険法で定められる事業所の考え方に準じ、各サービスごとに指定を受けた事業所ごとに一つと数えられます

たとえ同じ法人や同じ敷地内に複数の事業所が存在していても、それぞれ独立して人数枠を管理することが求められます。

日本人等の定義

「日本人等」として人数枠に含まれるのは、日本国籍を持つ常勤の介護職員だけではありません。
これには、介護福祉士国家試験に合格した「EPA介護福祉士」や、在留資格「介護」で日本に滞在している外国人、「永住者」や「日本人の配偶者等」など身分や地位に基づく在留資格を持つ方々も該当します

一方で、特定技能や技能実習、EPA介護福祉士候補者といった在留資格で就労する外国人介護職員は、たとえ常勤であっても人数枠にはカウントされません。

「常勤性」の定義

常勤性の定義として、人数枠の算定に含まれる介護職員は「介護等を主な業務とする常勤職員」とされています。

この常勤職員には、一般的な正社員だけでなく、正社員と同様の就業時間で継続的に働いている日給月給者も該当します。

なお、常勤職員の数は「常勤換算方法」を用いて計算するのではなく、実際に継続雇用されている職員のうち、介護業務を中心に行っている人員を直接カウントする必要があります。

「介護職員」の範囲

介護職員の範囲として、人数枠の算定基準に含まれるのは「介護等を主な業務とする常勤職員」に限られます。

したがって、介護施設で働く事務職や就労支援を担当するスタッフ、また看護業務を担う看護師や准看護師は、このカウントに含まれません

ただし、医療機関において看護師や准看護師の指導のもと、入居者の日常生活に関わる世話(例として食事や入浴、排泄など)を行う診療報酬上の看護補助者や、その指導を同じ病棟で担っている看護師・准看護師については、介護職員の範囲として人数枠に算定される扱いとなります。

こうした基準は、職種ごとの役割や実際の業務内容に即して人数を正確に把握するために設けられています。

複数の事業所を兼務している場合の計算

複数の事業所を兼務している介護職員については、人数の算出にあたり特定の事業所でのみカウントする必要があり、一人の職員を複数の事業所で重複して算定することは認められていません

どの事業所で人数として計上するか特別な決まりは設けられていませんが、一般的には主に勤務している場所で算入するのが適切です。

特定技能外国人が常勤介護職員総数を超えるとどうなる?

特定技能外国人が常勤介護職員総数を超えるとどうなる?

日本人職員の退職が重なり、特定技能外国人の人数が、日本人等の常勤職員の数を上回ってしまうケースも想定されます。

この場合、事業所は新たな特定技能外国人の受け入れが制限され、また、雇用中の従業員の在留期間更新手続きが不許可となる可能性が生じます。

雇用主は早急に日本人等の職員を補充するなど、人数枠を満たすための対応をしなければなりません

入管への届出・報告などは必要か?

特定技能外国人の数が日本人等の常勤職員総数を上回る状況が発生した場合は、速やかに入管庁に事情を説明しましょう

特定技能外国人を雇用している企業は、在留資格申請の際に「日本人等の常勤介護職員総数を超えない」ことについて誓約書を提出しており、その条件が満たせなくなった場合には、状況を報告する必要があります。

人数合わせのために外国人を解雇しても問題ないか?

人数枠を維持するために特定技能外国人を解雇すると、受け入れ機関に課されている「過去1年以内に非自発的な離職者を出していないこと」という条件を満たさなくなります。

この要件に適合しない場合、新たな受け入れだけでなく、既存の特定技能外国人従業員の在留期間更新も認められなくなります

人数調整を目的とした解雇は、全ての特定技能人材の受け入れが停止される事態となる可能性があるため、おすすめできません。

まとめ

この記事では、特定技能介護分野における外国人受け入れ人数枠の基本ルールや事業所ごとの人数計算、常勤性や日本人等の定義、人数枠を超えた場合の影響などについて具体的に解説しました。
受け入れ事業所が制度を正しく理解し、運用上の注意点を把握することが、安定的な雇用環境の維持につながります。

今後、特定技能制度を活用して外国人介護人材を受け入れようと考えている方は、実際の職員構成や人数枠の算定方法を事前に確認し、不測のトラブルを防ぐ体制づくりを進めることが重要です。
要件を満たせなくなる場面があれば、速やかに専門家や関係機関に相談し、適切な対応をとるよう心掛けましょう。

監修者コメント

介護分野における特定技能制度は、人手不足の解消を目的としているため、技能実習制度と比べて受け入れ人数枠が大きく設けられています。
ただし、人手不足の状況は地域や提供する介護サービスの種類によって異なるため、場合によっては人数枠の上限に達することも考えられます。

そのような場合は、永住者や定住者、留学生(アルバイト)、家族滞在者(アルバイト)といった、人数枠の制限を受けない在留資格を持つ外国人材の活用も視野に入れるとよいでしょう。

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監修者

安藤祐樹のアバター 安藤祐樹 申請取次行政書士

きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

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