この記事は、NIPPON VISA & LIFE編集部が、国や自治体などの公的機関の情報をもとに作成しています。ルールや料金は、お住まいの市区町村によって違うことがあります。
日本で国民年金の保険料を6か月以上納めた外国人や、厚生年金保険に6か月以上入っていた外国人は、条件を満たせば、帰国したあとに「脱退一時金(だったいいちじきん)」を請求できます。日本に住所がなくなった日から2年以内に、日本年金機構へ郵送か電子申請で請求します。受け取ると、それまでの日本の年金の加入期間はすべてなくなるので、よく考えてから請求してください。
日本に来たときの年金の手続は、日本に来たら役所でする手続|転入届・マイナンバー・国民健康保険・国民年金・住民税の基本で説明しています。
まず結論:脱退一時金を受け取るまでの流れ
- 帰国の前に、住んでいる市区町村の役所に転出届(てんしゅつとどけ。日本の住所からいなくなることを知らせる届出)を出します。
- 日本年金機構のホームページから脱退一時金請求書を用意します。日本語と外国語が並んだ様式で、14の外国語があります。
- 請求書に、パスポートの写し・口座の証明書・基礎年金番号がわかる書類などを付けます。
- 日本の住所がなくなったあとに、日本年金機構へ郵送か電子申請で出します。期限は日本に住所がなくなった日から2年以内です。
- 書類に問題がなければ、受付からおよそ4か月後に、指定した口座に振り込まれます。同時に「脱退一時金支給決定通知書」が届きます。
(出典:日本年金機構「脱退一時金を請求する方の手続き」、日本年金機構 年金Q&A「受取までにどれくらい時間がかかりますか」)
脱退一時金をもらえる人の条件
次の条件をすべて満たす人が請求できます。
- 日本の国籍を持っていない。
- 今、日本の公的年金(国民年金・厚生年金保険)に入っていない。
- 国民年金の保険料を納めた期間が6か月以上ある(国民年金の場合)。または、厚生年金保険に入っていた期間が6か月以上ある(厚生年金の場合)。
- 年金をもらうのに必要な期間(受給資格期間。10年)を満たしていない。
- 障害基礎年金など、年金をもらう権利を持ったことがない。
- 日本に住所がない。
- 期限(日本に住所がなくなった日から2年)を過ぎていない。
国民年金と厚生年金の期間は合わせて数えない
国民年金の期間と厚生年金の期間は、別々に数えます。たとえば、国民年金の保険料を納めた期間が4か月、厚生年金に入っていた期間が4か月の人は、合わせると8か月ですが、どちらも6か月に届かないので請求できません。
保険料を納めていない期間は数えない
国民年金に入っていても、保険料を納めていない(未納の)期間は、6か月の計算に入りません。保険料の一部を免除されて残りを納めた期間は、免除の種類に応じて一部だけ数えます(4分の1免除は4分の3、半額免除は2分の1、4分の3免除は4分の1)。全額免除や納付猶予の期間は数えません。保険料が払えないときの免除については、国民年金の保険料が払えないとき|免除・納付猶予の申請のしかた(所得の基準・窓口・持ち物・追納)を見てください。
(出典:日本年金機構「脱退一時金の制度」、日本年金機構 年金Q&A「どのような点に注意すればよいですか」)
国民年金の脱退一時金でもらえる金額
国民年金の脱退一時金は、最後に保険料を納めた月がある年度の保険料の額と、納めた月数で決まります。計算式は「保険料の額 × 2分の1 × 月数の区分に応じた数」です。
最後に保険料を納めた月が2026年4月から2027年3月(令和8年度)の人の金額は、次のとおりです。
| 保険料を納めた月数 | 支給額(令和8年度) |
|---|---|
| 6か月以上12か月未満 | 53,760円 |
| 12か月以上18か月未満 | 107,520円 |
| 18か月以上24か月未満 | 161,280円 |
| 24か月以上30か月未満 | 215,040円 |
| 30か月以上36か月未満 | 268,800円 |
| 36か月以上42か月未満 | 322,560円 |
| 42か月以上48か月未満 | 376,320円 |
| 48か月以上54か月未満 | 430,080円 |
| 54か月以上60か月未満 | 483,840円 |
| 60か月以上 | 537,600円 |
- 令和8年度の国民年金の保険料は月17,920円です。表の金額は、これをもとに計算されています。
- 最後に保険料を納めた月が別の年度の人は、その年度の保険料の額で計算されます。
- 国民年金の脱退一時金からは、所得税は引かれません。
(出典:日本年金機構「脱退一時金の制度」、日本年金機構「国民年金保険料」)
厚生年金の脱退一時金でもらえる金額
会社で働いて厚生年金保険に入っていた人の脱退一時金は、次の式で計算します。
厚生年金に入っていた期間の平均の給料の額(平均標準報酬額) × 支給率
- 平均標準報酬額は、厚生年金に入っていた期間の給料(標準報酬月額)とボーナス(標準賞与額)を合わせて、入っていた月数で割った額です(2003年3月以前の期間がある人は、計算が少し違います)。
- 支給率は、保険料率の2分の1に、入っていた期間に応じた数(6〜60)をかけた率です。最後の月が2021年4月以降の人の支給率は、次のとおりです。
| 厚生年金に入っていた期間 | 支給率 |
|---|---|
| 6か月以上12か月未満 | 0.5 |
| 12か月以上18か月未満 | 1.1 |
| 18か月以上24か月未満 | 1.6 |
| 24か月以上30か月未満 | 2.2 |
| 30か月以上36か月未満 | 2.7 |
| 36か月以上42か月未満 | 3.3 |
| 42か月以上48か月未満 | 3.8 |
| 48か月以上54か月未満 | 4.4 |
| 54か月以上60か月未満 | 4.9 |
| 60か月以上 | 5.5 |
計算の例:平均標準報酬額が200,000円の人が、厚生年金に36か月入っていた場合は、200,000円 × 3.3 = 660,000円です(この例の数字は説明のためのもので、実際の金額は日本年金機構から届く支給決定通知書で確認してください)。
(出典:日本年金機構「脱退一時金の制度」)
計算に使う月数は60か月(5年)まで
2021年4月から、計算に使う月数の上限は36か月(3年)から60か月(5年)になりました。日本の年金に61か月以上入っていた人が請求しても、金額は60か月分で計算されます。そして、それまでのすべての加入期間がなくなります。
日本に何回か来て働く予定の人は、帰国するたびに請求したほうが、加入期間に合った金額を受け取れることがあります。日本年金機構は、技能実習(3年)のあと一時帰国し、特定技能1号で5年働く人の例で、「技能実習が終わって一時帰国するとき」と「特定技能1号が終わって帰国するとき」の2回に分けて請求するよう案内しています。
(出典:日本年金機構 年金Q&A「合計8年間分の脱退一時金について、どのように請求すればよいでしょうか」)
厚生年金の脱退一時金にかかる税金(20.42%)と還付
- 日本に住んでいない人(非居住者)が受け取る厚生年金の脱退一時金からは、20.42%の所得税が引かれて振り込まれます。上の例の660,000円なら、134,772円が引かれ、振り込まれるのは525,228円です。
- 「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署に出すと、引かれた税金が戻ることがあります。
- 申告書を出す先は、日本で最後に住んでいた場所の税務署です。申告と還付の受け取りのため、帰国の前に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を同じ税務署に出す必要があります。納税管理人(のうぜいかんりにん。本人の代わりに税金の手続をする人)は、日本に住所か居所がある人なら誰でもなれます。
- 届出書を出さないで帰国したときは、申告書と一緒に出します。
- 脱退一時金の振込と一緒に届く「脱退一時金支給決定通知書」の原本を、納税管理人に送ってください。申告に使います。
- 申告書と届出書の様式は国税庁のホームページにあります。手続でわからないことは、税務署に聞いてください。
(出典:日本年金機構「短期在留外国人の脱退一時金請求書」(英語版PDF、日本語の説明つき)、国税庁)
請求に必要なもの
| 必要なもの | 説明 |
|---|---|
| 脱退一時金請求書 | 日本年金機構のホームページからダウンロードできます。ねんきんダイヤルに電話すると郵送もしてもらえます。年金事務所、市区町村、自治体の国際化協会にも置いてあります。 |
| パスポートの写し | 氏名・生年月日・国籍・署名・在留資格がわかるページ |
| 日本に住所がないことがわかる書類 | 住民票の除票の写しや、パスポートの出国日がわかるページの写しなど。帰国前に転出届を出していれば、多くの場合は要りません。 |
| 受け取る口座の書類 | 銀行名・支店名・支店の住所・口座番号・本人の名義であることがわかる書類(銀行が出した証明書など) |
| 基礎年金番号がわかる書類 | 基礎年金番号通知書や年金手帳など |
| 委任状(代理人が請求するとき) | 本人の代わりに日本にいる人が手続をするとき |
- 請求書は、英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・インドネシア語・フィリピノ(タガログ)語・タイ語・ベトナム語・ミャンマー語・カンボジア語・ロシア語・ネパール語・モンゴル語の14の言語があります。記入例もあります。
- 日本年金機構がアルファベットの氏名を記録し始めた2012年7月以前から年金に入っている人などは、転出届を出していても、日本に住所がないことがわかる書類が要ることがあります。
(出典:日本年金機構「脱退一時金を請求する方の手続き」、日本年金機構「脱退一時金に関する手続きをおこなうとき」(請求書のダウンロード))
請求書の書き方で気をつけること
- 「請求者氏名、生年月日および離日後の住所」と「脱退一時金振込先口座」の欄は、アルファベットの大文字で書きます。
- 住所は、帰国したあとの日本の外の住所を書きます。日本の住所を書くと、日本に住んでいる人として扱われ、支給されません。
- 海外の銀行で受け取るときは、SWIFT(BIC)コード(銀行を見分けるための8けたか11けたの英数字)を必ず書きます。書いていないと送金できません。
- 口座の名義は、銀行に登録している名前を正確に書きます。ミドルネームを頭文字だけにすると、名義が合わず振り込めないことがあります。
- 日本の銀行で受け取るときは、口座の名義がカタカナで登録されている必要があります。ゆうちょ銀行と一部のインターネット専業銀行では受け取れません。
(出典:日本年金機構 年金Q&A「請求書を記入するにあたって、どのような点に注意すればよいですか」、日本年金機構「脱退一時金を請求する方の手続き」)
脱退一時金請求書を出す先と出し方
- 国民年金・厚生年金だけに入っていた人は、日本年金機構に出します。共済組合(公務員などの年金)に入っていた期間がある人は、出す先が変わることがあります。
- 出し方は郵送か電子申請(e-Govの電子申請。「電子申請用送付書(年金給付用)」で検索)です。旅行など、働く目的以外で日本に来た人は、年金事務所などの窓口でも出せます。
困ったとき・よくある失敗
脱退一時金は、日本にいるうちに請求できる?
できます。ただし、先に市区町村に転出届を出し、転出の予定日以降に請求書が日本年金機構に届くように郵送してください。日本年金機構が請求書を受け取った日に、まだ日本に住所がある人は請求できません。
(出典:日本年金機構 年金Q&A「出国前に行うことはできますか」)
転出届を出さずに、再入国許可で出国したら?
転出届を出したうえで再入国許可(みなし再入国許可を含む)で出国した人は、脱退一時金を請求できます。転出届を出さずに再入国許可で出国した人は、再入国許可の有効期間が終わるまでは国民年金に入っている人として扱われるので、その間は請求できません。
脱退一時金の請求期限(2年)を過ぎたら?
日本に住所がなくなった日から2年を過ぎると、請求できません。帰国が決まったら、早めに準備してください。
脱退一時金をもらうと、年金の何がなくなる?
受け取ると、請求する前のすべての日本の年金の加入期間がなくなります。日本の年金に10年以上入っている人は、将来、日本の老齢年金(年をとってからもらう年金)を受け取れるので、脱退一時金は請求できません。また日本と「年金の期間を通算する社会保障協定」を結んでいる国の年金に入っていた人は、期間を合わせて年金をもらえる場合があります。将来また日本で働く予定があるかも考えて、請求するか決めてください。
(出典:日本年金機構 年金Q&A「どのような点に注意すればよいですか」、日本年金機構「社会保障協定」)
脱退一時金の請求を、日本にいる友人や会社の人に頼める?
頼めます。委任状を付けて請求書を出します。書類を代理人に送ってほしいときは、委任状にそのことを書きます。代理人は1人にしてください。複数の人に頼むと、決定が大きく遅れることがあります。
(出典:日本年金機構 年金Q&A「代理人を通じて、脱退一時金の請求を行うことはできますか」)
帰国の前にするほかの手続
年金のほかにも、帰国の前には健康保険や住民税の手続があります。
- 国民健康保険をやめる手続:国民健康保険の入り方とやめ方|加入する人・14日以内の届出・持ち物・保険料と軽減
- 帰国するときの住民税:日本の住民税のしくみ|いつ・いくら・どう払う?給料から引かれる場合と自分で払う場合、会社を辞めたとき・帰国するとき
外国語で相談できる窓口
日本年金機構では、通訳を使って相談できます。使える言葉は、英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・インドネシア語・タイ語・ネパール語・ミャンマー語です。
- 年金をもらう手続や脱退一時金のこと:ねんきんダイヤル 0570-05-1165(海外からは 03-6700-1165)
- 相談できる時間は、言葉によって違います。英語以外の言葉は、月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分までです。
(出典:日本年金機構「いろいろな国の言葉で年金の相談ができます」)

