2027年4月1日(令和9年4月1日)から、永住者の在留資格を取り消すことができる理由(取消事由)が3つ加わります。①入管法の義務を守らない、②故意に税金や社会保険料を払わない、③特定の罪で拘禁刑になった、の3つです。ただし、当たった場合でも多くは「定住者」などへの変更が想定されていて、病気や失業でやむを得ず払えない場合は当たらないと想定されています。
この記事は、永住者本人と家族、永住者を雇う会社や永住者が経営に関わる会社の人に向けて、出入国在留管理庁(入管庁)が2026年10月1日に作った「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」(判断の考え方と想定される例)を要約したものです。
当たるか、実際に取り消すかは、一人ひとりの事情に応じて判断されます。内容は2026年10月8日に入管庁の資料で確認しました。
永住許可の審査基準(永住許可に関するガイドライン)の改定は、永住許可ガイドライン改定で何が変わる?で説明しています。
いつから・何が変わるか:制度の概要
令和6年の入管法の改正で、永住者の在留資格の取消事由が加わりました。施行は2027年4月1日です。ガイドラインは2026年10月1日に作られ、2027年4月1日から運用が始まります。ガイドラインの案には、2026年8月4日から9月3日まで意見募集(パブリック・コメント)が行われました。
入管庁の説明では、永住者は許可の後に在留期間の更新などの審査を受けないため、許可の後に要件を満たさなくなる人が一部にいることへの対応です。
ガイドラインは、国会の附帯決議が、定着性や違反の悪質さなどの事情をよく見た特に慎重な運用と、具体的な例の提示を求めたことを受けて作られました。
新しい取消事由は次の3つです。
| 取消事由 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 入管法の義務を守らない | 在留カードの更新・携帯など、入管法で守るべき義務を果たさない | うっかりでも当たるが、一度だけで取り消すことは想定していない |
| 故意に公租公課を払わない | 税金・社会保険料(健康保険・年金)を、払う義務を知りながらあえて払わない | 病気・失業などやむを得ない事情なら当たらない |
| 特定の罪で拘禁刑 | 窃盗・詐欺・傷害など、決められた罪で拘禁刑になった | 執行猶予付きも含む。交通事故(過失)や罰金刑は対象外 |
あわせて、次の2つの仕組みもできました。
- 職権変更:取消事由に当たっても、日本にいることが適当でない場合を除き、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格に変える
- 通報:国や地方自治体の職員が、仕事の中で取消事由に当たると思われる外国人を知ったときに、入管庁に知らせることができる
今の法律でも、永住者の在留資格が取り消されることはあります。 引っ越した後、正当な理由なく90日以内に新しい住居地を届け出ない場合、うその住居地を届け出た場合、うそや不正な手段で永住許可を受けた場合です。また、1年を超える実刑や、薬物の事件で有罪になった場合などは、取消しとは別の「退去強制」の対象になることがあります。
なお、「特別永住者」はこの改正の対象ではありません。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインについて」、出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」、e-Gov「ガイドライン案の意見募集の結果」)
取消事由1:入管法の義務を守らない(在留カードなど)
対象になるのは、入管法で守るべき義務のうち、守らないと罰則があり、しかも退去強制の理由にはなっていない義務です。身近なのは在留カードの義務です。
ガイドラインが挙げている主な例は、次の4つです。
- 在留カードの更新・再交付をしない:有効期間が切れた、なくしたのに、更新や再交付の申請をしない
- 在留カードを持ち歩かない・見せない:在留カードを持っていない、見せるよう求められたのに断る
- 偽の在留カードに関わろうとした(未遂):偽の在留カードを作ろう・使おう・渡そう・受け取ろうとして、未遂に終わった
- 不法入国者などをかくまおうとした(未遂):不法入国者などと知りながら、逃げるのを助けようとして、未遂に終わった
3と4は、実際にやり遂げた場合は退去強制の理由になります。そのため、取消事由になるのは未遂の場合です。
うっかりの場合はどうなるか。 ガイドラインは二つのことを書いています。
- わざとでなく、不注意(過失)で義務に違反した場合も、取消事由には当たる
- ただし、更新を忘れた、不注意で持っていなかったという一度の違反だけで、在留資格を取り消すことは想定していない
また、病気や災害などで義務を果たせなかった「正当な理由」がある場合は、取消事由に当たりません。正当な理由の有無は、事情や義務の内容で個別に判断されます。
なお、引っ越した後の住居地の届出をしない場合や、うその住居地を届け出た場合は、この取消事由ではなく、今もある住居地の届出の取消事由で扱われます。
在留カードの更新や、なくしたときの手続は、在留カードの更新・住所変更・紛失の手続で説明しています。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」)
取消事由2:故意に税金・社会保険料を払わない
「公租公課」は、税金と公的な保険料などのことです。問題になるのは、払う義務を知りながらあえて払わない場合です。
対象になるもの・ならないもの
- 税金(公租):所得税、住民税、法人税、固定資産税など
- 公的な保険料など(公課):国民健康保険・健康保険の保険料、国民年金・厚生年金保険の保険料など
- 対象外:手数料・利用料、罰金・過料、交通違反の反則金
払っていない場合だけでなく、申告が必要なことがはっきりしているのに申告せず、本来払うべき税金などを払わない場合も含まれます。
「故意に」とは。 払う義務があると知りながら、あえて払わないことです。ガイドラインは、次のような事情を合わせて見て、「払う意思がないことが明らか」な場合が当たると考えています。
- 収入や資金・財産の状況
- 滞納の回数・金額・期間、支払の状況
- 滞納になった経緯と、その後の仕事や生活の状況
- 本人の言動など
一方で、やむを得ない事情があり、本人に責任があるとは言えない場合は当たりません。
当たると想定される例・当たらないと想定される例
ガイドラインの例を要約すると、次のとおりです。
| 当たると想定される例 | 当たらないと想定される例 |
|---|---|
| 長く滞納したうえ、届出をせずに引っ越すなどして、どこにいるか分からない | 病気・災害・失業など、やむを得ない事情で払えない(事業の不振、感染症や災害による収入の減少、DV被害による生活の困難、ハラスメントによる離職なども) |
| 何度も催告や滞納処分を受けても、払う意思を示さない(督促を受けても相談すらしない) | 催告などに応じて払う意思を示し、分割での納付や猶予を受けている |
| 分割納付や猶予の約束の期限までに払わないことを繰り返す | 生活保護に準じた措置を受けている |
| 脱税などで有罪判決を受けた | 給料から天引きされているのに、会社が納めていない |
| 滞納処分を逃れるために財産を隠すなど、徴収を妨げる不正をした | - |
| 会社の代表など経営に実質的な影響力を持つ人として、上のような行為をした | - |
「いくら・何か月滞納したら取消し」という基準はありません。 滞納の金額・期間・回数も判断の材料にはなりますが、ガイドラインは、一律の基準を決めて判断するものではないとしています。
会社の人事・経営者の方へ
- 給料から税金や保険料を天引きしたのに会社が納めていない場合、従業員本人は当たらないと想定されています
- 永住者が会社の経営や管理に実際に関わっていて、会社の税金や社会保険料を払う義務を知りながらあえて払わない場合は、当たることがあります
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」)
取消事由3:特定の罪で拘禁刑になった
対象になる罪は、決められたものに限られています。どれも、わざと行う罪(故意犯)です。
ガイドラインが挙げている罪を分野ごとにまとめると、次のとおりです。
| 分野 | 主な罪 |
|---|---|
| 刑法 | 住居侵入、通貨偽造、文書偽造・有価証券偽造・支払用カード電磁的記録に関する罪・印章偽造、賭博・富くじ、殺人、傷害、逮捕・監禁、略取・誘拐・人身売買、窃盗・強盗、詐欺・恐喝、盗品等に関する罪 |
| 暴力行為等処罰法 | 集団での暴行、常習的な傷害・暴行など(入管法第22条の4第1項第9号の条文では、脅迫・器物損壊に当たる部分は除かれている) |
| 盗犯等防止法 | 常習特殊窃盗、常習累犯窃盗など |
| 特殊開錠用具所持禁止法 | 特殊開錠用具の不法な販売・授与・所持、指定侵入工具の不法な携帯 |
| 自動車運転死傷処罰法 | 危険運転致死傷(無免許運転による加重を含む) |
| 盗難特定金属製物品処分防止法 | 指定された金属切断工具を隠して持ち歩くこと |
これらの罪で「拘禁刑」になった場合は、刑の長さに関係なく当たります。執行猶予が付いた場合も含まれます。また、2022年(令和4年)の刑法改正の前の「懲役」「禁錮」も、拘禁刑に含まれます。
対象にならないもの
- 交通事故を起こして「過失運転致死傷」で処罰された場合(わざとではない罪のため)
- 道路交通法違反で処罰された場合
- 罰金刑の場合(拘禁刑ではないため)
ただし、これとは別の制度として、永住者でも、無期または1年を超える実刑になった場合は、罪の種類に関係なく、退去強制されることがあります。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」、e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(令和6年法律第60号による改正後の第22条の4第1項第9号))
取消事由に当たったらどうなる?職権変更と取消しの分かれ目
取消事由に当たっても、すぐに取り消して出国させるわけではありません。流れは次の3段階です。
- 取消事由に当たるかを、調べたうえで判断する
- 当たる場合でも、原則として、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格に変える(職権変更)。ガイドラインは、ほとんどの場合「定住者」への変更を想定している
- 「引き続き日本にいることが適当でない」と認められる場合に限り、在留資格を取り消す
取り消すかどうかは、取消事由に当たるまでの経緯、それまでの在留の状況、これからの在留の意向などを合わせて判断します。ガイドラインが「取り消すことが想定される」としている例を要約すると、次のとおりです。
| 取消事由 | 取り消すことが想定される例 |
|---|---|
| 入管法の義務を守らない | 何度指導されても在留カードの携帯・提示や更新をせず、言動からもこれから守る意思がないと認められる/偽造在留カードを使おうとした/不法入国者などと知りながら逃げるのを助けようとした |
| 故意に払わない | 言動から、これからも払う意思がないことが明らか/いくつもの税金・保険料の滞納を繰り返していて、今後も払う見込みがない/脱税などで有罪になった |
| 特定の罪で拘禁刑 | 犯罪の傾向が進んでいると認められる(例:永住許可の後に拘禁刑の前科があり、さらに対象の罪で拘禁刑になった) |
なお、特定の罪で拘禁刑になった永住者は、執行猶予付きでも初めての犯罪でも、「永住者」のままにはせず、職権変更とすることが想定されています。
取り消すことが相当な場合でも、家族の関係や人道上の配慮が特に必要なときは、取り消さず職権変更とすることもあり得るとされています。また、改正法の附則には、入管法の義務を守らない・故意に税金などを払わないという取消事由を適用するときは、それまでの税金などの支払の状況や今の生活の状況などに十分配慮する、という規定があります。
職権変更の後は、「定住者」などの在留期間の更新の手続の中で、義務を守っているか、税金などを払っているかが、引き続き確認されます。職権変更の後に永住許可の要件を満たせば、もう一度永住許可を受けることもできます。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」)
手続の流れ:通報・事実の調査・意見の聴取
通報は義務ではありません。 国や地方自治体の職員は、仕事の中で取消事由に当たると思われる外国人を知ったとき、入管庁に通報することが「できる」とされています。たとえば、税金などの徴収で何度も催告や差押えをする中で分かった事実から、「払う意思がないことが明らか」な場合に当たる可能性があると考えられたときです。
- 通報があっただけで、取消事由に当たると判断されるわけではない
- 税金などを払うために、役所などに相談に行っただけで通報されることは想定されていない
調査と意見の聴取。 取り消そうとするときは、入国審査官などが事実を調べ、入国審査官が本人から意見を聞きます(意見の聴取)。その日時と場所、取消しの原因となる事実は、原則として事前に書面(意見聴取通知書)で知らされます。本人または代理人は、その場で意見を述べ、証拠を出すことができます。
取消しの場合。 取消しは、在留資格取消通知書が届けられることで行われます。新しく加わった取消事由で取り消される場合は、30日を超えない範囲で、出国のための期間が決められます。
不服がある場合。 職権変更や取消しの処分に不服がある場合は、取消訴訟などを起こすことができます。早めに行政書士や弁護士などの専門家に相談してください。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」、e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(令和6年法律第60号による改正後の第22条の4第2項〜第7項、第22条の6、第62条の2))
家族の在留資格はどうなる?
取消しや職権変更の対象になるのは、取消事由に当たった本人だけです。家族であることを理由に、家族の在留資格が取り消されたり、変えられたりすることはありません。
| 家族 | 家族の在留資格 | 影響 |
|---|---|---|
| 子 | 永住者 | 影響なし |
| 子 | 永住者の配偶者等 | 影響なし |
| 配偶者 | 永住者 | 影響なし |
| 配偶者 | 永住者の配偶者等 | 今の在留資格に当たらなくなるため、「定住者」などへの変更が必要 |
今、滞納がある・在留カードが心配な人へ:施行前にできること
施行前の不払いも、後から見られることがあります。 永住許可の後、2027年3月31日までの間に故意に払っていなかったことが、施行後に分かった場合も、取消事由に当たるとされています。ただし、施行前のある時点の事情だけで直ちに取消しや職権変更をするのではなく、その後の支払の状況も含めて判断するとされています。
差押えなどで、後から未払いがなくなった場合も、それだけで必ず対象から外れるわけではありません。ただし、未払いがなくなった事実も含めて判断されます。
払えないときは、早めに相談を。 「当たらないと想定される例」には、催告に応じて払う意思を示し、分割での納付や猶予を受けている場合があります。払うのが難しいときは、市区町村の窓口、年金事務所、税務署など、それぞれの窓口に早めに相談してください。使える制度は、各窓口の案内で確かめてください。
今日からできる確認リスト
- 在留カードの有効期間が切れていないか(更新の時期と方法は在留カードの更新・住所変更・紛失の手続)
- 引っ越したとき、住居地の届出をしたか
- 住民税、国民健康保険、国民年金に、払っていないものがないか
- 会社員の人は、給与明細で税金や保険料が天引きされているか
- 分割納付や猶予を受けている人は、約束の期限どおりに払えているか
在留資格について心配なことがあるときは、外国人在留支援センター(FRESC)の窓口にも相談できます。自分の場合にどうなるかは事情によって変わるため、不安があれば専門家に相談してください。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」)
よくある質問
Q1. 在留カードを一度うっかり持ち歩かなかった。取り消されますか?
不注意で持ち歩かなかった場合も、取消事由には当たります。ただし、ガイドラインは、その一度の違反だけで在留資格を取り消すことは想定していないとしています。
Q2. 失業して国民年金を払えていません。対象になりますか?
病気や失業など、やむを得ない事情で払えない場合は、当たらないと想定されています。ただし、判断は事情によって変わります。払えないときは、そのままにせず、年金事務所や市区町村の窓口に早めに相談してください。
Q3. 交通事故を起こした、スピード違反で罰金を払った。対象ですか?
過失運転致死傷(交通事故)、道路交通法違反、罰金刑は、特定の罪による取消事由の対象ではありません。ただし、自動車の運転による罪でも、危険運転致死傷で拘禁刑になった場合は対象です。また、無期または1年を超える実刑になった場合は、罪の種類に関係なく、退去強制されることがあります。
Q4. 永住許可の基準が変わりました。すでに永住者の私も見直されますか?
2026年10月1日の永住許可のガイドラインの改定は、永住許可の審査の考え方を変えるものです。すでに永住者の人が、その改定で見直されるわけではありません。取消しは、この記事で説明した別の制度です。許可の基準は永住許可ガイドライン改定で何が変わる?で説明しています。
Q5. 「定住者」に変わったら、もう永住者には戻れませんか?
職権変更の後に、永住許可の要件を満たしていると認められれば、もう一度永住許可を受けることができます。
(出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」、出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定)」)
まとめ
- 2027年4月1日から、永住者の在留資格の取消事由に、入管法の義務を守らない、故意に税金・社会保険料を払わない、特定の罪で拘禁刑、の3つが加わります。
- 当たっても、多くの場合は「定住者」などへの職権変更が想定されています。取り消されるのは、日本にいることが適当でないと認められる場合です。
- 病気・失業などやむを得ない事情で払えない場合や、分割納付・猶予を受けて払っている場合は、当たらないと想定されています。
- 家族の在留資格は、原則として影響を受けません(配偶者が「永住者の配偶者等」の場合は変更が必要)。
- 滞納がある人は早めに窓口へ、自分の場合に迷ったら専門家に相談してください。

